受信日:2011年10月21日


事務局のみなさん、

週間報告です。
今が工事のヤマです。

ジャリババでは必死の復旧工事(洪水路拡張工事)が続き、ベスード第一取水堰ではイーデ・クルバーン(犠牲祭)前に通水をめざし、努力が傾けられています。犠牲祭は、アフガンでは最大の祝日で、ちょうど日本の盆・正月を一緒にしたようなものです

今年の祝日は11月5日前後に始まり、まる一週間、休みになります。これを区切りにするのが最善で、職員・作業員一同、頑張っています。

(工事そのものは、まだ何ヶ月もかかりますが、いったん水が流れるようにしておけば、農作物への影響を心配する必要がなくなります。そこで、最近では、ある程度形ができた段階で下の水が浸かる部分だけを整えて送水し、後はゆったりと「水上工事」をするのが普通になってきました。)

季節外れの鉄砲水には泣かされましたが、何とか後片づけが終わりかけています。この2週間が今年度の最大のヤマです。
平成23年10月21日



「ジャリババ鉄砲水通過路」の拡張工事。積年の懸案だったが、水路の水を長期に絶やすことはできない。猛スピードで工事を進めている。最近では、作業速度・質共に著しく向上した。作業員が習熟したこと、鉄筋のサイズと配置を規格化し、構造を思い切って単純化したためだ。基礎も、厚さ1m以上のコンクリートを巨礫層の上に敷いている。見えない基礎工事が重要、上部構造が見え始めると、あっという間に仕事が進む。マルワリード用水路の復旧は数日後。
2011年10月19日



コンクリート・ミキサーが動かなくなると、人海戦術でコンクリートを練る。ここでは機械だけに頼ると大失敗する。吾々は働くアリとさして変わらない。だが案外、人力が機械を制することがある。汗する労働を見くびってはいけない。これで現場は着々と進んでいる。
2011年10月19日



ジャリババ洪水路対岸が、これまた積年の懸案。カシコート地域の保護である。数百年間堆積した同渓谷からの土石が張り出し、クナール河を大きく左岸に曲げている。流路の変更、傍流掘削以外に手はなく、ジャリババの工事と同時に開始した。大きな仕事なので、詳しくは来月報告。来春までに主要工事を終える予定。
2011年10月19日



ベスード取水門、基礎コンクリートの「掘り出し」。10月5日の鉄砲水で、工事中の取水門基礎が埋められてしまった。やっと洗い出せる状態となり、これも人海戦術で泥をかき除く。今冬では最大の構造物。基礎工事を3週間かけて行い、上部構造を作る矢先に洪水に襲われた。
2011年10月19日



ベスード取水門。上記写真の翌日の状態。来週中に上部構造の施工のうち、床面から1mの高さを完成。水を流す。
2011年10月20日



主幹用水路の側壁の施工は100mを越え、数日中に取水門に達する。水を流すのは一週間後。
2011年10月20日



カマ対岸、ベスード郡の護岸工事。しめきり堤の現在。写真の堤防を挟んで左手が旧主流のあった場所で、完全に乾いている。平年並みの夏の高水位なら大丈夫だが、更に万全を期して、12月から最終工事に入る。3500m全線の天端工事が数日後に終わる。
2011年10月19日



みなさん、お疲れさまです。河の工事を楽しく続けさせて貰っております。河は人間界とは別世界で、こちらが意図して思い通りになることはありません。恨みつらみを水に流し、河に尋くのです。その指示通りに動けば過たず、人の意を優先すると、必ずしっぺ返しがきます。だが物事に程度あり。そのうち水天宮さまのお告げが聞こえてくれば、精神科の後藤先生に相談いたします。お元気で。


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


← 前の報告へ ○報告トップへ○ 次の報告へ →

Topページへ 連絡先 入会案内