受信日:2011年10月28日


マルワリード用水路再開通
ベスード堰、仮開通寸前


目前の緊急工事は先が見えました。
去る10月5日のジャリババ渓谷の鉄砲水で水路が破壊され、マルワリード用水路の水が途絶えていました。ガンベリ沙漠開墾が停止し、再砂漠化の怖さを知りました。用水路沿いには既に多くの人々が定住しており、この水路が文字通り生命線であることを改めて知りました。工事はまだ続けられていますが、沙漠化の危険は遠のきました。

ベスード(I)堰・主幹水路・調節池の一連の工事は、灌漑を続けながらの仕事で、PMSとしては初めての体験。手順を十分考えて施工に踏み切った積もりでしたが、案外厄介です。そこで、作業が一時停止する犠牲祭前に、仮通水を行い、旧水路を埋めつぶす予定でした。これがPMS始まって以来の超突貫工事。現場・事務所一体となり、総力を挙げて取り組みました。残業・休日返上は3年ぶり、滅多にない事です。この一週間というもの、職員一同の気力が充溢し、現場は活気にあふれています。

この山を越えれば、じっくりと仕上げにもって行くことができます。ベスード(カマ対岸)護岸は年内に終わる見通し、マルワリード取水堰改修、クズ・カシコート堰回復、カシコート護岸、シェイワ河道回復工事は3月までかかります。来春は相当な政治的荒れ模様が予想されるので、重大な河川工事は年度内に済ませておくべきだと考えています。
平成23年10月28日  記


ジャリババ渓谷洪水通過路の改修。10月22日に仮通水、水を流しながら工事を進めている。
2011年10月26日



改修工事現場とジャリババ渓谷。旧通過路は幅14m、改修後は幅35mに広がり、大過は考えにくい。用水路着工以来の悲願だった。
2011年10月26日



同時に進められているカシコート護岸対策。河道回復工事。昨年の大洪水で村落の土地が大きくえぐられた上に、取水口が破壊され、カシコートの下流域(クズ・カシコート)は渇水で農業ができない状態。主流を右岸シェイワ側に寄せたうえで、左岸カシコート側の護岸工事に入る。渇水期とはいえ、クナール河は巨大河川だ。数か月かけて主流を移す。PMSの工事開始で民心は安定している。
2011年10月26日



ベスード取水口。犠牲祭前の仮通水をめざし、猛烈な速さで工事が進められている。旧灌漑水路を保ちながら行う工事は、時間がかかる上、危険が多い。問題は、写真手前にある旧用水路入口の軟弱地盤だ。泥土の深さ3~4m直下に岩盤があり、処理は困難でないが、水が流れる状態ではまともな工事ができない。新設水路から灌漑して旧水路を乾し上げ、泥土を巨礫層で置換する。カブール河は暴れ川とは言えないが、別の困難がある。
2011年10月27日



取水口作業風景。水路両岸の蛇籠工、水門の鉄筋コンクリート工事、ソイルセメント(レベルとり)、軟弱地盤処理、排水路設置らが一緒に進められる。同時並行で、ジャリババでは洪水通過路の拡張、カシコートが進められていた。てんやわんやの作業光景も、今週がピークだった。
2011年10月25日



10月25日時点の調節池全景。排水門は池底に傾斜をとり、細砂が流出しやすいようにしている。
2011年10月25日



仮通水を待つ主幹水路。長さ200m前後とはいえ、超特急。皆の努力・協力のたまもの。この一週間は速かった。2011年10月28日


★Dr.T.Nakamura★
中村 哲


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