異常少雨で各地に渇水
マルワリード灌漑流域にも影響大
カマ、ベスードは安泰
異常な少雨です。私たちが観察を始めた2002年からの9年間で、最も少ない川の水位です。2000年の大干ばつの時でさえ、これほどではありませんでした。12月初旬、雨季を思わせる曇天が数日あり、申し訳程度に高山の降雪があっただけです。政情混乱と重なり、人々の間に不安が蔓延し、殺気立っています。スピンガル山麓、特にソルフロッド郡は、もう小麦は壊滅とあきらめています。私たちのカバーするジャララバード北部でも、水争いがあちこちで発生しています。この一週間は水不足解消で飛び回り、疲労困憊。
この中にあって、例年ならカラカラのカマ・ベスードの両郡は、PMSの取水堰建設で渇水知らず、幸運だったと思います。和解したばかりのカシコートは、悲惨の一語。水の大切さを改めて思い知りました。
以下、今週の動きです。
- ジャリババ洪水通過路;構造物の建設を間もなく終了。
- カシコート河道回復工事;クナール河は巨大。現在の機械力では単年で終了は不可能。数年に分けて施工するが賢明。今冬は河道を分割してカシコート側を襲う流水圧を減ずるにとどめ、夏の様子を観察したのち、来秋に更に工事を進める。
- ベスード第一取水堰;堰は最終段階で、堰き上げ高を再確認したのち、来週中に堰造成を完了。取水門、調節池の送水門、排水門はコンクリート工事を12月中に完了する見通し。現在、植樹を準備中。排水路は12月中に試験全開して排水能力を確認。
- ベスード護岸;3.5㎞全体の天端工事を終了し、しめきり堤保護の新設石出し水制(長さ40m)を完了。現在、灌漑路を兼ねて2000m地点から約700mにわたり、浸透水処理の側溝を、堤防法尻に設置中。小取水門を上流端に置く。
1700m地点からの蛇行路(旧第一支川)は、直進河道の深掘れで、初秋に完全な渇水に陥るようになった。更に、直進河道の掘削延長が住民の猛反対で不可能となった今、第3分流から本川化した流れが、しめきり堤を直撃する危険が完全に去ったとは言えない。同堤の保護のためには、ある程度第一支川を回復し、流圧を分散する方が望ましいと思える。最低水位の状態で、再調査を行う予定。
- カマ取水堰;第一、第二とも水量が安定、ほぼ冬季の予定量(1日約50~60万トン)を送り続けている。
- マルワリード取水堰;ジャリババの洪水被害から立ち直り、冬季の必要量は取水できている。
しかし、シギ村落群が異常渇水に見舞われ、シェイワ取水堰がシェイワ村落群だけをかろうじて潤すにとどまっている。(シギの取水口は数年前から完全に取水困難に陥っており、専らシェイワ用水路とマルワリード用水路からの分水に依存してきた。)シェイワ取水堰は異常な低水位で取水が制限され、水争いが発生している。シェイワ堰の取水量の低下は、昨年の大洪水でクナール河の主要河道が変化したことに加え、冬の異常な少雨によるもので、過去8年間で最低水位を記録している。同取水堰に注ぐ河道の回復を図ると共に、マルワリード用水路の取水能力を上げる以外に方法がないと判断される。
そのためにマルワリード用水路取水口の間口を広げる改修を計画していたが、工事規模は小さくない。今年は過密な工事計画で断念した。
代替えに昨年中断した中洲回復工事による堰上がりに期待したが、中心河道が深くなって重機の通過は危険、カシコート側からのアプローチでなければ不可能と判断、これも年度内施工を断念した。しかし、対岸カシコート堰が近い将来できれば、この問題の解決ともなり得る。12月5日からマルワリード堰の余水吐き(砂吐き)を木材や柳の小枝を束ねてせき止め、水位を上げている。シギ地域はこれによって来週中に全域を灌漑できる見通し。
- シェイワ取水堰;上述の通り。ジャリババの鉄砲水(10月)で一時中断していた河道回復工事(堰に注ぐ支川の復活)を再開。とりあえず緊急に送水路を掘削、来週に機械力を集中して一挙に進める予定。
- その他;ガンベリ開拓;農業専門家の高橋さんから土壌の分析結果をいただき、凡その方針に大きな差がないことを確認。
現在、排水路造成に集中。これがないと開墾ができない。カルシウム塩濃度を下げる土地改良も、排水が大前提。測定されたEC値の低さは、「まだ沙漠だ」ということである。落葉、水田、マメ科の作付け、砂防林の効果、野草・動物の生息、家畜の徘徊などで有機物が増えれば、自ずと土地は肥える。開墾もまた、自然を相手にする総合的な作業である。土地の特殊事情に合わせ、時間をかけ、着実に進める。
2011年12月7日