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ベスード第一取水口の堰工事を完了
懸案のジャリババ洪水通過路完成
~異常渇水と政情不安が続く中、主力をガンベリ沙漠へ集中~

この一年は、カマ取水口、対岸ベスード護岸、ベスード第一取水口などの工事に加え、2010年夏の大洪水の後始末、2011年10月の集中豪雨、続く河川の異常低水位、ガンベリ沙漠の砂嵐被害などで緊急工事が多発、最も多忙な年となりました。

この間、日本では東北大震災があり、現地では無政府状態が広がりました。この中にあって、半ば奇跡的に主要工事が完遂されたのは、ひとえに皆さんの支えによるものだと感謝しております。内外共に予断を許さぬ厳しい状況が続きますが、PMSは「でき得る最大限」をめざし、力を尽くす所存です。

現下の政局の変化と自らの高齢化を受け、事業がひとつの曲がり角にあるのは事実で、何らかの新機軸を打ち出す段階だと思っています。と言っても、事業内容に変更はなく、いかに継続させるかの工夫が要るということです。
暗い面では治安情勢の悪化や職員の生活不安、明るい面ではJICA共同事業の予想以上の成功があります。今後、実のある仕事を進める上で、内外の良心的協力を更に強め、「安定継続」を一つの目標にしたいと思っています。


さて、以下週間報告です。

1.ベスード第一取水口;堰の仕上げをほぼ完了。
冬季の水位変動を再度確認して、必要なら多少の補完工事を行う予定。コンクリート構造物の建設は完了しており、残るは柳枝工による水路の強化、水門番小屋建設、チャルハ(水門堰板の上げ下げに使うアフガン式道具)の設置、その他の植樹など小さな仕事を残すのみとなった。

2.ベスード護岸工事;石材の輸送はドレーン工のための砂利だけとなった。
目下の最大懸案は、第一分流の復活によるしめきり堤の保護、小灌漑路の設置で、極端な水位低下の中、努力が続けられている。

3.ジャリババ洪水通過路;12月20日、全工事を完了。
思えば10月5日の集中豪雨による決壊の後、10月8日に改修工事を開始、2ヶ月半をかけた。実作業日数58日。機材不足と治安悪化に悩む中、作業員50名がほぼ手作業だけで仕上げる記念碑的な工事となり、積年の懸案が処理された。流路内の土砂堆積は劇的に防止できる。

4.ガンベリ沙漠給水塔工事;ジャリババの洪水で中断していたが、12月21日に再開。
植林が1月に開始されるので、最後の仕上げを急いでいる。

5.ガンベリ第一農場排水路;これもジャリババ洪水路作業でペースが落ちていたが、12月17日掘削と石材輸送を本格化させた。
この工事が、今後のガンベリ開拓のカギを握る。先の混乱の可能性を念頭に置き、当分は物量を集中する。

なお、先日の報告で「クナール河の河道変遷が分かりにくい」との話もあったので、グーグル衛星写真から作成した即席の地図を添付します。

最後になりましたが、今年も変わらぬ温かい御協力、心より感謝いたします。良いお年をお迎え下さい。

平成23年12月24日 記

DEFG区間の河道変化とシェイワ堰の河道回復

ベスード第一堰を対岸中洲側から見る。最大の懸案だったが、ほぼ完成した。最終的な堰の長さを46mから116mに伸ばし、水門前の砂吐きを長く取り(50m以上)、安定水位を保てるようになった。越流する水深が浅いレベルで一定し、上流のダムの突然の放流にも耐える。40~50㎝の変動は10㎝前後にとどまる。結果的に、やはり斜め堰の威力だ。カマ取水堰に続いて、超低水位でも必要取水量がまかなえる点で更に改良が加えられた。2011年12月20日

対岸から見るベスード第一堰の取水門。河の水深(取水門直前)25㎝で2000ヘクタール以上を潤す。マルワリード用水路の堰を考えると羨ましい限り。2011年12月20日

ジャリババ洪水通過路の完成。マルワリード用水路着工以後、ほぼ毎年泣かされながら後回しにされてきた改修工事。「そのうち、そのうち」と言いながら、他の工事に忙殺され、用水路造成工事の先端がどんどん遠のいて行ったためだ。7年間の落とし前を付けるように、がっちりと出来上がった。PMSにとっては、積年の悲願を果たす結末となった。D沈砂池に堆積した膨大な泥土は、ほとんどがこの地点から流入してきたものである。2011年12月20日

ベスード護岸近況。今年早くから植樹した所は、苗木が活着し、来春から更に旺盛な成長が期待される。背景の高山はダラエヌールとケシュマンド山脈。2011年12月20日

しめきり堤の裏法のドレーン工。ドレーン工とは、堤防の堤体を護る措置。河の水かさが増すと、水通しの悪い泥土が軟化して決壊しやすくなる。そのため、堤体内に貯った水を速やかに排出する構造を作る工事をいう。裏法に砂利など水はけのよい素材で覆い、堤防に沿って溝を掘る。PMSでは、マルワリード用水路の崖地のルートで積極的に施工、用水路を成功に導いたいきさつがある。2011年12月20日

ガンベリ第一農場末端に沿って工事中の排水路。農場と言っても、一辺が1㎞以上あるので、小さい仕事ではない。だが、これがないと、まともな灌漑は不可能。植林と並んで、開墾の基礎は給排水路の整備だ。これも長い懸案で、後回しにされてきた改修工事。今春の砂嵐被害は、砂そのものよりも、給排水路が埋めつぶされて灌水が途絶えたことによる被害が大きかった。2011年12月21日

ジャリババの決壊で中断した平和ヶ丘給水塔の工事再開。来年1月から本格的な砂防林拡張が始まる。そのために欠かせない施設。主な仕上げはできかけていたが、水が途切れ、主力チームがジャリババ洪水路に回されたためだ。用水路から水を引き込み、タービン式ポンプで給水塔まで上げる。2週後には機能し始める予定。2011年12月21日

平和ヶ丘頂上から給水塔を望む。水面から塔までの落差は11m、以前手がけていた灌漑用井戸に比べれば、格段に効率よく水を汲み上げる。配管は既にしてあり、後は水槽の上部施工とポンプ小屋だけ。「植林計画」の準備は完了しつつある。2011年12月21日

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