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ベスード第一堰・ベスード護岸・タプー堰の完工式近し
~カシコート河道変更工事は終局段階
秋の本工事に向けて全ての努力を~

このところアフガニスタンではごたごたが絶えず、ジャララバードで外国人の姿を殆ど見ることがなくなりました。それでも、20年前のソ連軍撤退前後の混乱ほどではありません。
携帯電話もインターネットもなかった当時に比べると、案外通信手段の発達によって過敏な反応が助長されるような気がしています。
作業地では治安は非常に良いのですが、カブールやジャララバード市内がいろいろとあっているようです。アフガン人兵士が外国兵を射殺したり、米兵が乱射事件を起こしたり、血なまぐさい話が多く、人々は長引く戦乱にうんざりしています。

逃亡もできない一般生活者としては、家族を守り、何とか生き延びるように立ち回るのが人情というもので、今のところ暴発的な蜂起はないようです。

さて、目下の最大懸案はカシコートの河川工事でしたが、河道変更工事は最終段階に入りました。今冬は厳しい寒さで、川沿いの寒風はさすがに体に応えました。
カブールではテント生活者の凍死が絶えなかったといいますが、河の工事にとっては、増水期が遅れた分だけ幸運でした。間もなく交通路の敷設と水制の設置を準備し、秋の本工事に備えます。
しかし、先は見えてきたものの、膨大な物量投入は続いており、まだまだ気は抜けません。よろしく御協力をお願いします。

ベスード護岸のうち、タプー地区を潤す取水口が懸案でしたが、3月中に工事を終え、ベスード第一取水口と共に3月末か4月初旬に竣工式を予定しています。

植樹は約65万本を記録、ガンベリ沙漠・防砂林拡張の努力が続けられています。本当はこちらの方に興味があったのですが、結局例年通り、河川工事の現場指揮で、深く関ることができませんでした。

カシコートの工事現場に赴く途中、マルワリード用水路沿いを走ります。その変貌ぶりは驚くべきで、おそらく初めて見る者には、昔からあった豊かな村落としか見えないと思います。

柳の若葉と小麦の緑が陽に映えて、美しいです。

平成23年3月16日 記

寒風に 耐える柳の 新芽かな
作業地で真っ先に春を告げるのが柳の芽吹きである。この後に、確実に河の増水が始まる。世の乱れをよそに、自然は変わらずに廻る。2012年3月15日

カシコート作業地。洪水で発生していた主要河道は右岸寄りに戻され、間もなく埋め立てを完了する。正面の壊れたPRTの橋が問題で、左岸側の旧堤防を撤去し、ぎりぎりまで川幅を広げる。水量は筑後川の数倍、根気が要るのは当然。2012年3月15日

埋め立て河道末端、洪水で流失した主幹水路地点の埋め立て。主幹水路のうち、同地点で約130mが地面ごとなくなって、途切れていた。一時的につないで仮開通しておけば、カシコート上流側は工事中でも灌漑できる。モノは大きいが、作業は単純。「掘る・運ぶ・積む・埋める」の連続。2012年3月15日

3月11日から突然寒さが戻り、横殴りの冷雨で濡れながらの作業は辛かった。特に埋め立て河道の末端は深く広く、膨大な量の土石が必要、増水期が始まれば作業は不可能になる。それでも、不満の声ひとつなく、黙々と作業が進められている。これは吾々の戦なのだ。2012年3月12日

作業地の危険はニュースにならぬが、自然の恐ろしさは、治安状態などものの数ではない。誤れば致命的である。事情を知らぬ運転手が指示を待たずに自分で判断、軟弱地盤(底なし沼)に進入したもの。埋没した重機の救出。作業員も掘削機も無事復帰した。カシコート対岸・B岩盤麓、河道拡大作業。2012年3月15日

ベスード護岸2250m地点、タプー地域を潤す取水口は、前面にふとん籠工と柳枝工を施し、間もなく完成する。灌漑面積は公称1000ヘクタール以上。これによって、ベスード第二堰(タンギ・トゥクチー)を除けば、全ベスード郡3500ヘクタールの主な灌漑をPMSが保障したことになる。2012年3月14日

同タプー堰の砂吐き(余水吐き)。砂利の中に巨礫を埋めた堰は長さ220m(水門から250m)、渇水と洪水対策を両立させようとする苦心は、結局、日本の斜め堰の結論に戻る。これなら地元の手で補修は楽だ。なお堰の上流側の水制2基は、洪水による地形の変化で堰を壊すため、撤去して高水敷保護の連続堤防に変えた。巨礫の石材は、自在に転用できるのも大きな魅力。2012年3月14日

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