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カシコート工事、増水直前で目標量を達成
~マルワリード用水路保全態勢に向け、行政の動き前進~

目下の緊急工事、カシコートの河道変更は、3月1日現在、予定掘削と埋立の85%以上を達成、山場を越えました。
折から気温が急に上がり始め、一週間後には増水が始まります。今年の寒さは格別でしたが、私たちにとっては、河の増水が遅れる分、大きな助けとなりました。工事の進捗も嬉しい限りですが、もっと嬉しいことがありました。

2月26日にカブール政府・ナンガラハル州合同で灌漑局が技術団を派遣、かなり丹念に調査を行いました。
このようなことは初めてです。マルワリード用水路を始め、カマやベスードの取水堰を調べ、カシコートの現場にもやってきました。現場実見を重視しているようで、質問なども的確、プロだと思いました。

その彼らが、PMSの取水施設を全て見たうえで、「斜め堰と水量調節を一体化した一連の新システムは、アフガニスタンにとって画期的なものです。また、マルワリード用水路はアフガンの灌漑に必要な全ての要素が含まれています。移管をスムースにするため、今後も来ますので宜しく」と絶賛の上、礼を述べて行きました。

資料も十分に読みこなして来たようです。第一、「斜め堰」や「堰板」などという言葉さえ、当地では聞いたことがなかったのです。まるで、こちらが伝えたいことを向うから述べるではありませんか。

更に、マルワリード用水路25㎞を全線にわたって精力的に見学、ガンベリ沙漠の様子も隈なく観察していきました。
話では、2017年に予定される灌漑局管理に向け、調査をくりかえすのだそうです。分水路の水量と灌漑面積などを記録し、「ここには管理人が要る、あそこは要らない」などと、かなり実際的な下調べのようでした。そのうち保全計画のレベルで必然的に半官半民とならざるを得ず、PMSの熟練作業員の協力、試験農場に管理センターを置くなどの話が出てくれば、希望通りの展開となります。
さすがに、この混乱した中でも真面目な人々は居るものだと思いました。実のところ、書類のやりとりや的外れな批判、政治的立ち回りなどに、困っていたので、これは意外な出来事だったのです。

PMSとしても、「灌漑事業の全国展開とマルワリード用水路維持は、行政の参入が必要」と常々考えており、これを機に、積極的に協力いたします。
協力態勢によっては、全土の「自力更生モデル」になり得るかもしれません。良い変化を祈るばかりです。

なお、カシコートの河川工事が分かりにくいようなので、資料を送ります。専門の方にはお恥ずかしい限りですが、大方は外れてないかと思います。
みなさん、お元気で。

2012年3月1日 記

完全に河道を変えたクナール河。下流側中心から望む。掘削は現在旧主要河道にかかり、低水時の河道は幅約200mとなる。
2012年2月28日

カシコート側下流から望む。開放されたX分岐部(資料参照)は約260m、右岸寄りへ流れを変えた。
2012年3月1日

旧中心河道にかかった掘削。かなり古い河道らしく、河床は巨礫の厚い層で覆われていた。掘削が難航したが、埋め立て用には強力な材料。悲観論が吹き飛んだが、増水を直前に依然として手が抜けぬ状態。掘削機4台を並べ、掘削と同時にダンプに積み、至近距離の埋め立ての河道へ運ぶ。
2012年3月1日

膨大な埋め立て量。埋め立て後は、基本的に洪水による破壊線を守り、川幅を狭めない。護岸は用水路保護と溢水防止だけが目的だ。人の利より、水の理を考える。護岸の破壊も水の理による。自然からは、多少のおこぼれに与るだけにとどめたが良い。
2012年3月1日

流失したカシコート主幹水路の残存部に埋め立てが迫る。回復する失地は、用水路沿いの最低限の幅だけにとどめる。
2012年3月1日

作業地上流部の状態。河道が右岸の巨礫堆積層に寄り付き、幅が狭く、かなりの水深。同様の変化を現作業区域で期待できる。写真右はマルワリード取水堰。川中島と舟通しが見える。巨礫は地下深く連続していて、岩盤のような効果を発揮する。
2012年3月1日

上流側から分岐の河道平坦部(X地点)と作業区域を望む。浅くなった旧主要河道を掘削中。カシコート側新河道の閉塞(左)と旧河道の開放(右)が同時に進行した。(資料参照)
2012年2月28日

2月22日、カシコートのサルバンド村で、女子学童を軍のヘリが機銃掃射し、13名が重軽傷を負った。現在、長老会で対策が話し合われている。PMSとしては、直ちに負傷者の救済措置を行った。重症は6名、うち1名が門衛だった。見舞いを述べるジア先生と学童の両親たち。
2012年2月23日

青空教室で学ぶ女子学童。教室とは名ばかり。木陰の青空教室ならともかく、厳寒・酷暑の学習。カシコートがいかに無視されてきたか分かる。軍側は何の反応も示さなかった。重機関銃の弾丸が石を砕き、その石の破片で学童が負傷したもの。射撃は至近距離で銃眼から行われたので、「意図的な射撃だ」と住民は思っている。誰も来ない地域の出来事は闇から闇へ葬られる。PMSは校舎の新設を秋から始める。
2012年2月23日

ベスード護岸。小取水口の建設。渇水に悩むタプー地域の村落は、2月28日の送水開始で一息ついた。工事は3月いっぱい続けられる。
2012年3月1日

堰の長さ200m、主幹水路50m。小さいとはいえども、斜め堰の一人前のミニアチュア。砂州が影響を受けると取水できなくなるので、水制を撤去し、土砂堆積と中洲の崩壊を防ぎ、堰のつけ根に砂吐きを設ける予定。
2012年3月1日

堤防の裏法側にある分水施設。冬にしてはかなりの水量だ。村民たちが狂喜し、作業員たちに果物をたくさんふるまった。
2012年3月1日

ベスード第一取水口。事実上完成。現在、水門番を置いて水量調節の訓練を施している。3月中に竣工式を予定。カブール政府灌漑局の調査団は、これを完全に新しいシステムだと評価した。同部は、比較的狭い所にまとまってPMS方式の取水施設が一瞥できる。これが多くの人々に恩恵を与えるよう、今後も灌漑局と協力を続ける。
2012年2月23日

調節池(沈砂池)完成の状態。手前の側溝は高い位置のジューイ(小水路)の浸透水を受け、沈砂池に注ぎ、一部は管水路で隣接の田畑を潤す。
2012年2月23日

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