前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ

カシコート準備工事、増水を前に緊迫
~春一番の砂嵐、ガンベリ沙漠排水路が埋没
マルワリード用水路からシギ村落群への部分送水を決定~

カシコートの河道移動(=砂州移動)工事は終りに近づき、増水期が始まりました。技術的なことは割愛しますが、これまでのどの工事よりも難工事です。
間髪を入れず、低水敷(概ね冬の河道)護岸を施すと同時に、急な増水に耐えるよう対策を立てねば、10月以来の努力が水の泡となり、今秋の取水堰工事が流れます。「カシコート和解」も、ただの話で終わるでしょう。現場に張りつき、河を睨んで緊迫した日々が続きます。

一方、シギ村落群の高地側はマルワリード用水路の分水を決定、自然洪水路を250m横断するサイフォンの建設が4月から予定されています。これは、シギ取水口水門建設とセットになっています。

現在、シェイワ郡の既存耕地約3000ヘクタールが安定灌漑域に入り、完全に回復しました。これに新規開拓(ガンベリ沙漠)を加えると、カシコートを除く同郡の耕作可能面積は、最終的に3800haに迫ると思います。

昨年のシギ・シェイワ間の水争いは、取水量が十分であっても、地理条件によっては湿害を起こすので、マルワリードからの取水制限を余儀なくされていたのです。そこで2008年に譲渡したPMSシェイワ取水堰を再び直接管理下に置き、シギ村落群下流域にマルワリード用水路から送水、シギ取水口とシェイワ取水口の水量調整を行います。
こうして、万遍なく郡全体を潤せるという結論です。問題は夏の洪水の調整が困難で、こういった問題は、長老会による内部の話し合いで解決されます。しかし、数十年の沙漠化の過程で長い間荒廃していた事情があります。長い難民生活からの復帰、他地域からの移住が爆発的に増加、急速な人口増加に社会秩序が追いつかない状態なのです。

かくて、緑の大地計画の重要部分であった「マルワリード」もまた、カシコート計画と並び、仕上げに向けて更に一歩を踏み出そうとしています。最近何かと戦争の泥沼化や外国軍撤退が取りざたされますが、なかなか普通の生活者の様子は話題になりません。ここでは、政治現象とは別の世界があります。

春一番は、猛烈な砂嵐と共にやってきました。秋から進めていたガンベリ試験農場からの排水路は、一晩で埋まりました。まだまだ砂防林の成長が足りず、仕方ないことです。自然相手に、うまい話はありません。また振出に戻り、時を待ちます。

お元気で。

平成24年3月23日 記

カシコート地図(河川工事用)交通路その他(2012.03.22更新)

春一番は、ガンベリ沙漠の猛烈な砂嵐、クナール河の褐色の濁流と共にやってきた。間一髪、河道は中心に移されたが、速やかに高水敷の処置、橋前後の川幅の拡大を行う。今年は寒さの分だけ増水期が遅れ、幸運に恵まれたものの、異常な降雪量を思うと、もうすぐ訪れる増水量に身も凍る。平年を上回る雪解けがあるのは確実。
2012年3月22日

湾曲蛇行してカシコート側を破壊していた主要河道は、嘘のように埋めつぶされた。だが、息もつかせず高水敷の処置を行い、河岸から主要河道を遠ざけ、蛇行路の再発を防止する。同時に高水位護岸を兼ね、1.5㎞の交通路敷設を開始する。
2012年3月22日

高水敷の保護は、根固め工を兼ねる。洗掘された400mの湾曲部に沿って、4基の水制が低位置で設置される。これを高水位の護岸壁と緩傾斜で連続させるもの。河岸線から冬の河道までの水制の長さは、それぞれ上流側から、50m、60m、70m、60mで、幅6m。厚さは約2mで大部分を河原に埋設する。石材は50~120㎝の巨礫を使う。2007年1月にマルワリード用水路F・G区間の保護で行われた護岸法と、ほぼ同様のもの。先端をL字型に上流に屈曲させれば砂礫が堆積する。
2012年3月22日

間もなく埋立てが完了するとはいえ、腐っても鯛、クナール河の全水量80~90%を流していた旧主要河道の末端は、広く深い。増水が始まり、必死の作業は手を抜くことができない。吾々の緊迫感をよそに、のんびりと目を光らせているのが子供たちだ。クリケット広場ができると喜んでいる。最近のクリケット熱は本格的で、さしづめ日本の草野球。パキスタンより強いというから相当なもの。難民生活の中で得たものらしい。
2012年3月22日

壊れかけた橋にかける吾々の思いは複雑だ。崩れれば、秋に始まる大量の資機材の搬入は、20㎞下流のカマ橋から、悪路をたどる泥沼輸送となる。残れば堰上がり効果で、溢水の危険度が増す。とりあえずは橋の前後を開放し、流水断面積を広げる。左岸の堤防を30mカシコート側へ後退させ、右岸の砂利堆積を除去して岩盤沿いの深掘れを期待する。橋から下流側左岸は遊水地として、植樹のみを行う。
2012年3月22日

前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ