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カシコート、増水期の調査・測量を開始
ジャララバード北部穀倉地帯の農業生産急増

クナール河、カブール河共に、現在が最高水位です。今年は雪の多かった分だけ河の水も多く、これに集中豪雨が重なると大変なことになります。しかし、幸いというべきか、4月下旬に現地を空けて以後、雨が一滴も降っていません。

屋外は48℃、湿度20%以下、ドライヤーの熱風が吹きつけてくるようです。それでも作業は営々と続いています。戦や政治の噂もここでは遠く、どんな「アフガン復興」もあざ笑うかのような厳しい自然の下、郷民と一体で激闘が続きます。
最近、作業地のジャララバード北部で、著しく人口が増えています。これに伴って農業生産も明らかに増えており、農産物の価格は下落しています。安定灌漑で、多角的な作付けができるようになったためです。
水稲栽培も増えていて、雨のない分だけ、送水量増加を余儀なくされています。

1.カシコート調査;夏の調査・測量を来週中に終え、7月中旬までに最終設計が成ります。

2.シギ・サイフォン;両側の釜場建設を完了、現在両端の水路造成を始めています。送水管200mの設置は、秋10月からの予定でしたが、一日も早い送水が待ち望まれ、両側から少しずつ始めています。しかし、鉄砲水が来れば一発でダメになるので、洪水流路を十分確保しながら進めています。

3.タプー堰(ベスード護岸);分流復活で、今度はカマ側から水害被害の苦情あり、調査中です。

4.ガンベリ給排水路;第三主幹排水路(約1.5㎞)が開通、砂嵐対策が容易になりました。砂嵐被害は、単に砂が吹きつけるだけでなく、分水路に堆積して潅水を困難にするためです。これによって急流で堆積土砂を洗い去ることが可能となり、開拓を容易にします。一年以上かかりました。

5.カンレイ村揚水設備(水車);まだまだ研究の余地があります。軸受け部分の摩耗、回転半径の不足、流水圧を受けるシステムの効率化、汲み上げ箱からこぼれる水受けの改良などが問題で、結局、朝倉の水車が最も効率が良く、鉄製で類似品のコピーを計画しています。ただ、これまでジャララバード現地の鍛冶屋・溶接屋の技術で十分製造が可能なことが分かり、7月中に設計して、「PMS試作品」を年内に一基、設置したいと考えています。

6.農業関係;トピックスは、何と言っても落花生の効用です。窒素肥料の代わりにマメ科植物を盛大に植えたことを報告しましたが、アルファルファ、ハルハル、大豆、シャフタルなどの中で、落花生がずば抜けて好成績を出しています。また、収穫後も野生化しますが、玉ねぎや西瓜などの野菜とよく共存します。西瓜は昨年より糖度が高く、美味しくなっています。やはり地域特性というのはあるものだと思いました。気をよくして、落花生の植付けを増やしています。

平成24年6月29日 記

ガンベリ沙漠・作業場の公園化。ここが初めから作業の中枢を担ってきた。鉄筋裁断、蛇籠・土管・どぶ板らの生産、種籾の保存、育苗場らが集中している。かつて熱風と砂塵を浴びながら作戦会議が毎日行われた場所でもある。昔日の悲壮な面影が消え、ただ静寂。
2012年6月27日

植え込みには花が絶えない。作業場をとりしきるザミール・グルの配慮だ。P・M・Sをかたどった灌木。
2012年6月27日

事業はヤワではない。苦労を忘れまいと、記念塔を作る。これは生死を預かる戦なのだ。
2012年6月27日

増水期のマルワリード堰。堰自身は頑丈だが、対岸カシコート側からの工事がなければ完成と言えない。今回のカシコート堰は、それを実現するものとなる。川中島は2012年の大洪水で半壊したが、ヤナギはたくましく生きている。
2012年6月27日

カシコート堰・取水口予定地を左岸側から見る。260mのマルワリード堰と連続すれば、全幅600mの石張り堰となり、両岸を安定させる。両岸の協力は積年の懸案だが、ここで平和とは言葉ではない。一大決戦の難工事を前に緊迫。測量・設計ミスは許されない。緑の大地計画の天王山。
2012年6月27日

取水口予定地から1.5㎞のクナール河。冬の河道移動工事の結果、左岸カシコート側へ大きく湾曲して村を破壊していた河道は右岸寄りで直進。狭い架橋部での堰上がりに備えた高水敷は、水深0.5~1.0mで浅く広い流れとなっている。右岸の堆積巨礫除去でB岩盤を露出、河床低下が起きている。
2012年6月27日

懸念された架橋部の堰上がりは、確実に改善している。両岸計40m以上を開放、直進河道を回復したためだ。通過部の流水断面積はかなり大きくなっている。昨年同時期の増水期に比べると、橋の上流側・ジャリババ洪水路付近で1.0~1.5mと、著しい水位低下を観測した。通りが良くなったのだ。
2012年6月28日

カシコートの橋は、残存する可能性がある。洪水期の倒壊は悪夢だった。
2012年6月28日

堤防天端は、幅20m以上。堤防に沿って主幹水路を置くため、頑丈にしている。交通路の確保にもなる。この下に沿って旧主要河道が流れていたとは、誰も想像力が働かない。
2012年6月28日

湾曲部をあえて残し、長さ50~70mの越流型水制8基を設置、蛇行再発と共に堰上がりに備えている。水制先端では直進河道の河床低下が起きている。水制は階段状に水を落とし、水の勢いを減殺して高水敷を護り、堤防を安定させるためだ。
2012年6月28日

ベスード護岸、連続堤防部の現在。増水期の現在、平年より水量が多いが、健在。天端は水面からまだ3.5m以上余裕がある。下段の根固めに連続する部分のヤナギ、上段表法に植えたユーカリが成長、美しい景観を作っている。
2012年6月27日

カマ第一・第二堰の状態。安定水位を誇る第一堰でも、水門前で1.8mを記録した。因みに、2010年の大洪水時は、2.1~2.4m、2011年の増水期は1.5mの水位だった。秋の改修を予測して、石材を輸送・蓄積している。
2012年6月27日

カマ第二取水門。完成から3度目の夏。巨礫を準備して更に観察を続ける。
2012年6月27日

柳枝工で植えた柳が3.0m前後に成長している。取水量は現在11~12m3/秒、一日取水量はカマ第二取水口だけで100万トンを超えている。耕地が急速に拡大し、水田が増えたためだ。
2012年6月27日

第一農場南端に開通した排水路。昨年の砂嵐被害以来、一年がかりで、賽の河原のような工事だった。全長約1,200m、落差7mの急流で押し流す。これで農場の分水路に堆積する砂を容易に浚渫できる。留守中に二回、試験的に流して威力を確認した。
2012年6月27日

シギ送水サイフォン。上流側の釜場に水門を設置する。
2012年6月27日

カシコート測量風景。みな腰まで水に浸かり、技師から護衛、作業員に至るまで現場で村民と一体、意欲的に動くのがPMSの気風となった。
2012年6月28日

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