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カシコート本工事開始
シギ送水計画本格化

シギ送水路とサイフォンは、約半分の工事を終えていますが、洪水期を過ぎる10月後半、一気呵成に260mのサイフォンを開通します。

カシコートは、2月からの準備工事を完了、本工事に突入しました。現在、重機の主力を河川工事にふりむけ、工事は山を迎えます。地形からして、これまでで最も困難な作業となります。「緑の大地計画」はこれを以て、ピークとなります。

カシコートの安定灌漑が実現すれば、ジャララバード北部3郡の穀倉地帯(耕地16500町歩・65万人)をPMSが支えることになり、初めの約束を果たすことになります。

会報でも述べたように、維持管理が建設以上に難題でしたが、ジャララバード事務所の並々ならぬ努力が加わり、大団円にこぎつけると思います。
これはアフガンの政情変化と無縁でありません。皮肉なことに、まともな援助が農村部に届かぬ現実を住民が骨身にしみて知り、自力でしか生活を守れないと覚悟したことが大きかったと思います。
結局、ここでは、地縁共同体の絆を強めて協力し合うことでしか生きられない。大方の国際的な理解と異なり、もう殆どの者は、政情や戦局を語ることに嫌気がさしているようです。

去る9月10日の定例浚渫行事の開始は、行政側も加わり、特筆すべき前進だったと思います。

もちろん、カシコートで「緑の大地計画」が終わるわけではありませんが、ここ数年が大いなる希望の天王山だと覚悟し、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
詳細は逐次、お知らせいたします。

付;理解のため、カシコートの工事地図を送ります。

平成24年10月5日 記

カシコート堰・護岸・主幹水路工事要図

主幹水路と調節池の要図

シギ送水サイフォン。
現在260mのうち、120m以上を仕上げた。湧水は、マルワリード用水路の末端から浸透して地下水流を成しているもの。
砂漠地帯の地層は、3~7mの直下に粘土質のシルト層があり、保水力が案外よいことを示している。洪水路では厚い砂利層があって、基礎工事を容易にした。
2012年10月2日

サイフォン上流側の水門。
予定では最大送水能力;約2m3/秒、用水路取水量の約30%に当たる。
2012年10月2日

サイフォン下流側の送水路は約1.8㎞、現在約500mを完成、急勾配で砂の堆積を防ぐ。
2012年10月2日

ひと夏を越えた新設堤防。
洪水で下段まで水に浸かったが健在、今冬に仕上げ工事を行う。
旧主要河道は対岸の岩盤側に移った。今春から数回の大規模な洪水に見舞われたが、橋も堤防も守られた。水制先端の深掘れが観察される。
2012年10月2日

堰造成のための最終測量。
マルワリード堰と同一水位とし、以後の改修工事は容易となる。
2012年10月2日

対岸マルワリード堰側から眺める。
実現すれば、クナール河の全面石張り斜め堰となり、越流幅600m以上、PMSとしては記録的な工事となる。両岸からの協力がなければ維持は難しい。その意味でも、「緑の大地計画」の仕上げにふさわしい。
2012年10月3日

カシコート堰・水門予定地点の礫石。
径30~60㎝、相当の急流に耐える。この礫石層の深さ数メートルをコンクリート化すれば、強靭な基礎を得ることができる。
2012年10月3日

渇水期に入った河道と交通路。
交通路は約2㎞以上、5か月をかけて準備工として実施され、10月の本工事を待っていたもの。
いよいよ本番だと、みな武者震いしている。
2012年10月3日

主幹用水路の長さは約1.8㎞、両岸に二段の蛇籠・柳枝工を施すと、最低でも3600個分(7200m3、約2万トン)の角石が要る。
あまり知られないが、石材輸送が最も予算を食う。手近な岩盤を選んで自分で採取するのが節約と時間短縮につながる。
みな慣れてきて、岩質を容易に見抜けるようになった。
2012年10月2日

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