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カシコート取水門の基礎工事を完了、堰造成に焦点
総植樹数70万本を突破

10月下旬に入り、河の水位が更に急速に低下、河川工事はやり易くなりました。

しかし、タンギトゥクチ(ベスードII)取水口は完全に途絶え、PMS=JICA共同事業のタプー堰は、かろうじて給水を保っている状態です。
他のカマI・カマII、ベスードI、マルワリード、シェエイワの各堰と取水口は健在、異常渇水の中を変わらずに送水しています。タプー堰も容易に復旧します。ベスードIIだけは、今のところ静観しています。

現地は10月25日から犠牲祭の祝日で、一週間ほど動きが止まります。さしづめ日本の正月か、欧米のクリスマスに相当します。
この日ばかりは、親戚家族が一堂に集まり、日頃の怨念や暗い思いを去り、みな晴れやかな顔になります。

外国人たる小生らは単なる休みですので、少し詳しく現状を伝えたいと思います。長いので、以下のように分けて送信します。
退屈かもしれませんが、少しずつ読んで楽しんでください。

1.カシコート堰の工事
2.カマI・カマII、タプー堰の現状
3.ガンベリ開拓(植樹と果樹園)

カシコート

最大の山は堰・取水門・護岸で、要するに河の周りです。特に、全体で幅200m、長さ100mの全面石張りの斜め堰、堰上流の河道分割が焦点です。
いったん取り込んだ水は比較的たやすく、早ければ12月中旬、遅くとも来年1月末までに1.8㎞の調節池まで水が流れます。
今回は、2010年の大洪水による複雑な地形変化で難工事ですが、2~4月に予備工事ができたおかげで、思ったより順調に進んでいます。

カマ取水口とベスード護岸(タプー堰)

カマ側は極めて安定しており、PMSがカマIに手をつけた2008年12月まで、カマ郡全体が冬の絶対的な水欠乏、夏の洪水で荒れていたことを思うと、今昔の感があります。
分割した河道も安定しています。ベスード側の護岸は、1700m地点の河道分割が焦点になっていましたが、2回の夏を過ぎ、改修を重ね、少しずつ望ましい変化が起きています。
タプー堰は、この河道安定が成れば、問題がなくなります。犠牲祭のイード明け、小麦の播種に間に合うよう改修を行います。

ガンベリ開拓・植樹

9月の集計で、植樹70万本を達成しました。半分以上が用水路周りのヤナギで、最近は防風・防砂林のガズ(紅柳)が多くなっています。
今年はザクロ6,000本を筆頭に、果樹が多く植えられています。シギのサイフォンはあと一息、努力が続けられています。

こちらも朝晩が寒くなってきました。河とのにらめっこも、防寒具が要るようになりますが、川の流れは千変万化、その目で見れば、新しい発見や工夫が尽きません。結構、楽しいものです。

みなさんもお元気で。

平成24年10月26日 記

河道⑤を上流側から見る。
石張りが始まった。河床面の上流端は取水門の床面より50㎝高くしてあり、冬の取水に備える。
高水位の夏は、余水が巨礫の床面を浅く広く流れる。傾斜1/100(100mで1m落ちる)の比較的緩やかな流れ。巨礫は4㎞離れた谷から輸送、最も手間と予算がかかる。
2012年10月24日

取水門上流側の掘削。
幅60m前後、深さ1m以上を掘り、川幅を広げる。掘削後に巨礫で連続堤防を造る。
河の中心部は水深30~50㎝と意外に浅いが、対岸の岩盤に近づくほど深い。普通、連続堤防を設置すると、堤防面に接する流れが速くなり、深掘れを起して安定する。
河岸の両方が深く速い流れになると、中心部に紡錘状の中州が発生して、河を二分することが多い。掘削部で既にその兆候が観察される。
掘削で得る砂利は膨大、そのまま埋立てに使う。
2012年10月24日

下段の籠が両側に並ぶと、もはや用水路に見える。
A1区間380mのうち、百数十メートルを終えた。ペースはかなり早い。
2012年10月24日

カシコートは昔からマルワリード用水路で働いてきた者も多く、かなり慣れている。
良し悪しは別として、一般に田舎になればなるほど、屈強で忍耐強い。また、自分の村のことだから、仕事に気合が入る。
2012年10月24日

「やはり水路だ」と、みな納得。
2012年10月24日

水路底の造成(ソイルセメントの敷設)はA1区380mを完了。
イード明けからA2区400mが始まる。架橋部の基礎もできている。
2012年10月24日

取水門床面のコンクリート打設作業。
この日は作業員を総動員し、床面17×16m、厚さ40㎝(108m3)を一挙に仕上げた。超旧式のミキサーと猫車で人海戦術。コンクリート・ミキサーが故障すれば、更に人員を増し、鉄板を敷いてシャベルで混ぜる。こんな光景は日本で消えたが、生コン車に頼るほどの量でもない。水セメント比など、管理に注意すると案外できがよい。
2012年10月22日

翌日からは見える場所の建設で、作業も楽になる。
下部の壁面ができあがると、堰板を入れて周辺構造(堤防の連結部、土砂吐きなど)の造成が開始される。
2012年10月24日

進む中州の造成作業。低い位置で砂利を敷く。
砂利といっても、河原の巨礫をたくさん含むから、弱い材質ではない。この上に更に大きな巨礫を敷き詰め、両端に河道(③と④)を形成する。
2012年10月24日

造成した中州を上流から眺める。
幅75m、長さ90mのうち、約四分の一を終えた。やっと原型が見えてきたところで、あとはイード明け。全体がつかめてくると、作業が更に速くなる。運転手や作業員が理解すれば、次の作業手順を次々と準備できるからだ。
2012年10月24日

造成中州の左岸側が土砂吐き(河道④)の流路となる。
急流がくるので、流路床面に80~100㎝以上の巨石を敷き詰める。流路壁は緩傾斜で強靭に仕上げる。
写真左は、自然が作った巨礫の手本。表面に残る石は径30~40㎝のものが多く、流方向に向け、やや扁平な礫が、屋根瓦か魚鱗のように重なる。
2012年10月24日

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