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カシコート、堰と護岸に集中
~見通しは12月10日、第④河道架橋による交通路確保で決す~

間もなく成否の分かれ目です。詳細は後日述べますが、うまくゆけばマルワリード・カシコートの両岸が安泰となります。取り込んだ水はどうにでも出来ます。出来上がった段階では、どうしても用水路だけに目が行きますが、実は取水堰が心臓部です。取水堰のない用水路は、心臓のない血管と同じです。見えなくなるので重視されない傾向がありますが、予算と労力の大半が取水堰と護岸、それも基礎工事に費やされてきたことは、案外伝わりません。これが、一般の理解を最も得にくい点の一つです。

11月中旬、寒気が訪れ、河の水位がぐんと下がりました。好機到来です。だが冬のモンスーンの第一陣も到来、曇り空が断続的に増えてきました。冬の雨で洪水が起きることはありませんが、事故が起きやすく、作業中断を余儀なくされることが増えてきます。特に作業員の手に頼る仕事はそうです。できないことはないでしょうが、結局例年のように春の増水を気にしながら、徒らに川辺に釘付けとなり、心身と財政を消耗いたします。

号令一下、用水路内の工事を中断、すべての機械力と人員を堰と河道造成に集中させました。本格的な雨期に入る12月下旬前に、堰の基本工事を完了いたします。これが成れば、あとは護岸を片づけ、用水路は大きなことではないと思います。時間の問題で、水路はできます。

1.取水門に連続する堤防の造成と上流部の河道分割
2.第4河道の架橋、流失中州の回復、第3河道の処置
3.第5河道の造成


以上が目下の最大関心事です。ガンベリ沙漠やシギ地域の作業場からも、応援部隊を送り、工事は現在がピークです。やや時代がかって野暮ったいやり方ですが、他に方法はなかったと思います。おそらく、現地活動史上、技術的な練度・士気、工事規模、組織性において、最初で最後のものとなるでしょう。現場で殆ど無駄な議論はありません。一作業員から指導的な職員の誰もが、黙々と仕事に励んでいます。

12月10日に予定される第4河道架橋の開通で交通路を確保し、同河道に大量の水を流すと共に、第3河道を埋め、一挙にマルワリード側の処置ができれば、「緑の大地計画」完成の先が見えると考えて差しつかえありません。

なおマルワリード=カシコート連続堰の長さは、測量で約500m前後です。出来上がってから、確実に実測いたします。

お元気で。

平成24年11月23日 記

マルワリード堰遠望。
連続堰は全体に、上流へ向かって放物線状の弧を描き、クナール河を横断する。

マルワリード=カシコート連続堰約500mのうち300mが既設のマルワリード堰。地図上、便宜的に河道①~⑥と名称を付している。①と②がマルワリード堰の部分を成す。

実際には、河道①は5本の砂吐きに分割され、巨礫の隙間を流れる。河道②は旧中州との間に幅約50m、長さ70mで水底全体に巨礫を敷いている。

かなり強く、2010年の大洪水でも施工部分(A)は残り、機能している。河道①を分散したのは、異常低水位への備えで、取水量が十分でなければ、砂吐きを順次手作業で埋めつぶし、取水門前の水位を上げるためだ。

だが、堰を渡した中州そのものが流失することは予測できなかった。流失中州(A後部)に新たな中心河道が発生し(河道③)、取水門前の水位が下がっていた。今回のカシコート堰の工事で、中州が復元されるに連れて水位を回復、マルワリード流域は十分潤されている。
2012年11月22日

建設中のカシコート取水門と対岸を上流側から見る。
中洲の復旧と護岸工事が進んでいる。
2012年11月22日

上流部の護岸工事。
取水門から約400m、川幅を50m拡大し、深く掘削する。
下段はもろい土質を除去、河床掘削で得た粒径が20~40㎝以上の丈夫な礫石で置換する。この上に更に巨礫を敷き、河側に巨礫の斜面を作って捨石工で根固めとする。河は左岸カシコート側が浅く、膨大な礫石が出る。
2012年11月22日

取水門から下流側堤防の造成。
こちらは比較的緩やかな流れを受け止める。取水門から引き込まれた用水路は、堤防の裏法にあり、堤防壁と用水路壁が連続する。カマ第二取水口と類似のルート。
2012年11月22日

取水門背面。
高さ4mのうち、下部2mまでの建設が間もなく終わる。上部施工は格段に楽になる。
2012年11月22日

同前面から見る。
ここまでが大変だったが、あとは一直線。
2012年11月22日

同水門右翼側。
同部は、そのまま河道⑤の左岸壁を成すので、基礎を特に頑丈にしている。
2012年11月22日

取水門右翼から河道⑤を望む。
河道といっても、堰の一部で、敷き詰めた巨礫の先端は取水門床より50㎝高くし、浅い堰き上げを起すようにしている。
取水門に連続する堤防は、用水路側・河側共に蛇籠で作り、高さ4m、長さ60m、厚さ2~3mでコンクリート遮水壁を作っている。
2012年11月22日

1.グーグルの衛星地図は、推定2010年9月下旬から10月初旬と考えられます。2回の夏を経て、多少地形の変化があります。

2.クナール河の流量は、低水位の冬で400~700m3/秒、高水位の夏で3500~4500m3/秒です。
詳しい調査を続けているイラン政府の団体も、ほぼ一致した値を出しています。
2012年8月の大洪水では、推定10000m3/秒前後、これも同意見でした。

3.洪水時の河底の正確な流速は、測量不可能です。このため、水底にある礫石の粒径から割り出しています。

4.カシコートの耕地面積は、地図上緑地が少なく見えますが、実際には灌漑が及ばなかったためです。送水が十分であれば、おそらく、2500ヘクタールを優に超えます。

5.「激流に対して架橋の橋脚部が弱いのでは」という危惧がありましたが、普通の橋と異なり、工事用の仮架橋とお考えください。付け根部分の配筋の写真を送ります。

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