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シギ・サイフォン(260m)が完成
~カシコートの工事、大詰め~

1.カシコート

水門建設は完了。今週、主幹水路内の第二架橋地点が完成。調節池(取水口から1.8㎞)の手前まで一週間以内に掘削が進みます。この具合では、3月中旬に主幹水路が村に到着します。今春からカシコート地方で最大の村、サルバンド、バルカシコートの各村落が、水欠乏と洪水の恐怖から解放されます。いったん主幹水路ができれば、後は既存の水路を整備しながら年月をかけ、20㎞先の最後の村、ゴレークまで送水が可能となります。

次なる伏兵は、上流側の護岸でありました。1月末になってクナール河全体が異常な低水位に見舞われ、浅い河床が顕わになりました。その結果分かったのは、洪水侵入路が意外に幅広く、更に375m、上流側護岸を延長せねばならないことでした。2010年の大洪水後、PMSが手掛けたベスードの護岸地域と同じ変化です。詳細は次に報告しますが、増水まであと一か月半です。急きょ、重機を集中して作業を始めました。これにて水門から上流側の護岸線は875m、下流側1.8㎞を合わせると、約2.7㎞となります。

パキスタン側に難民化していた村民が続々と帰っています。カシコートの人口は目に見えて増えているようです。尋けば、パキスタンの政情も関係があるらしく、特にペシャワール周辺は、アフガン側よりもはるかに治安が悪いそうです。ペシャワール市内は爆破事件が続発、旧PMS病院周辺も、空港の爆破で犠牲者がたくさん出たそうです。近くに住んでいた古参職員の家もやられ、家族数名が死亡、本人も瀕死の状態だそうです。すぐに見舞いを送り、皆で無事を祈りました。大方の救援活動も停止し、アフガン東部農村地帯全体がひどい状態にあえいでいますが、「ここは何処よりもマシだ」と、口々に話していました。

2.ガンベリ沙漠開墾・シギ灌漑

シギ地域の計画はこれまで述べてきた通りです。おっかなびっくりで進められてきたガンベリ沙漠の洪水路横断サイフォン260mは、吾々が手掛けた中で最長、さすがに壮観です。9ヶ月かかりました。今週開通し、来る2月2日にささやかなお祝いを致します。これはマルワリード用水路の最後の分水路で、記念的な事業となりました。ここもいったん開通すれば、分水路は安心して延長できます。現在、1.8㎞中800mまで小水路が出来ています。

作業はまだまだ中途ですが、見通しが出てきたことを皆と喜び、懸命の努力が続けられています。内外共にあまり明るい報がありませんが、作業地はどこよりも平和で、皆希望を持って働いています。

皆さんもお元気で。

平成25年1月31日 記

完成したサイフォンの埋め立て作業。明後日に試験的に水を通す。260mは、吾々にとり、さすがに長大。9ヶ月の苦労が見えなくなるのはちょっぴり寂しい、と作業員の弁
2013年1月31日

サイフォンに続く送水路。ここで恐れるのは砂嵐だ。浚渫の手間を省くべく、砂を押し流すように工夫してある。サイフォンから1.8㎞は分厚いソイルセメントを敷き、練石積みで掩蔽して急傾斜をつけている。ガンベリ試験農場の排水路1.2㎞も、この方法で成功した
2013年1月31日

カシコート=マルワリード連続堰を上流側から見る。異常な低水位にもかかわらず、両取水門は一定水位を保っている。堰の工事は、ひと夏を経て再開される。現在、主幹水路造成と護岸工事が主な作業になってきた。対岸にマルワリード取水門。10年の苦節を思い、ただ感無量
2013年1月26日

完成したカシコート取水門を用水路内から見る。おなじみのPMS様式。床面からの高さ4メートル。取水幅を広くとって低水位に備え、堰板を二列にして高水位の流水圧を減殺する。古臭いが、コンピュータ制御どころか電気もない現地では、人間の五感の方が精確
2013年1月26日

水門から下流側を見る。ライニングはソイルセメントだが、砂利が多く、コンクリートに近い。両隅もソイルセメントで埋めつぶす
2013年1月26日

用水路右岸は第5河道と接し、堤防を兼ねている。約80mにわたって両蛇籠間にコンクリートを詰め、厚い遮水壁を成している
2013年1月26日

PMSが使うソイルセメントは、粘土に近いシルトとセメントを4:1の体積比で混ぜて使う。モルタルと異なり、割れることが殆どなく、土や石と良くなじむ。隅に詰めると流速が増す上、漏水が少なくなる。マルワリード用水路のFG区域で使用され、以後定番となった。鬼木さんの功績
2013年1月26日

復活した中州(カシコート堰)の全景。表面は砂利だが、全体に巨礫と籠が敷き詰めてあり、中州状の堰と呼ぶ方が正しい。夏の状態を観察してから、秋に長さ100m、幅30m以上で土砂吐き(第3河道)を島の中心に設け、第2河道を浅くして完成される
2013年1月26日

堤防から対岸マルワリード側を見る。手前から第5、第4、第2、第1河道。第3河道は閉塞して中洲の一部となっている。9カ月後に第4河道と同じ方法で架橋し土砂吐きを造成して(第3河道となる)交通路を確保し第2河道を浅くする。第1河道(マルワリード堰体)は5本の土砂吐きに分割されている
2013年1月26日

第6河道は十分に幅をとり( 入口部で15m、扇状に広がり末端は50m以上ある )、夏の洪水に備える
2013年1月31日

主幹水路は現在700m地点を造成中( 図参照)。下段のみを作って水を流し、上段は「水上工事」。送水を急ぐからだ
2013年1月31日

ライニングは1130mを終え、掘削を急がせる。掘削→ライニング→下段の蛇籠壁→隅の埋めつぶしと、順に追いかけるように進み、通水後に上段蛇籠壁→植樹で完成する。皆作業手順を会得し、この数年で著しく手際が良くなった
2013年1月31日

第二架橋地点(取水門から805m)。旧取水門の場所。この背後からクナール河の主流が蛇行侵入していた。工事前の写真( 2011年3月16日P4)と比べて下さい)
2013年1月31日

新たに加えられた取水門上流側の護岸地点。2010年の大洪水で、川に面する畑が約100mにわたって消え、年々拡大。住民はパキスタンに難民化したが、戻ってきている。急激な砂利堆積が河を塞ぎ、堰上がりを起したもの。ベスード護岸1700m地点と同様な変化
2013年1月31日

堰き上げを起した砂州を除去し、川幅を約100m拡大、不連続堤か水制で河床を低くする一手。期限は、川の増水前までの6週間。今年も忙しい春となる。本日から重機の大部分を集中して工事が始まった。他の所は後でも出来る。ここで洪水侵入を許せば、取水堰や用水路もかえって弊害
2013年1月31日

主幹水路最終点に近い道路横断暗渠。基礎うちを終え、建設が始まった( 図参照)。水路は、ここを横切った直後に調節池に流れ込む。道路は2010年の大洪水時に破壊されたもの。道路で堰き上がった洪水でサルバンド村全体が浸水した。その後、住民が更に壊して水の抜道とし、洪水の再来に備えたらしい
2013年1月31日

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