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カシコート、洪水進入部の護岸工事が山
用水路工事は1㎞地点に迫る
~シギ分水路、主なコンクリート構造物を一カ月以内に完了予定~

今年度最大の工事カシコートの連続堰、関連する護岸工事は終盤に向かっています。1月末、低水位で顕わになった洪水進入部の、河岸と河床の処置が、このところ最大の焦点でした。危ういところだったのです。冷や汗をかく話ですが、上流側の護岸延長をしなかったら、次回の高水位期に大規模な被害を出したでしょう。詳しくは後日、別に報告します。この結果、取水門から上流に向う護岸線は875mに伸び、下流側1.8㎞を併せると約2.7㎞に及ぶ長大なものとなりました。昨年2月から、一年間の護岸工事としてはベスードに次ぐ記録です。自然は確かに恩恵ですが、人知の及ばぬ恐ろしさもあります。

これに比べ、いったん取り込んだ水は処置が楽です。ほぼ予定通りに用水路建設が進められています。主幹水路1.6㎞の掘削を完了し、下段蛇籠工は間もなく1㎞を超えます。二週間後には調節池の造成が始まります。5月初め頃、一時開通して排水路から河へ流し、後は上段施工し、調節池からの延長ルートは、地域自治会の決定を待ちます。その後は、こちらの気力の問題です。

シギ村落の灌漑は、去る2月3日に260mの洪水横断サイフォンを開通、送水路1.7㎞のうち、現在900mを仕上げ、4月頃までには開通する予定です。しかし、狭い区間に鉄砲水の通過路がやたらに多く、案外手間取っています。カシコートと共に、人々は続々と帰り始めていて、人里は見違えるように活気づいています。

河沿いの寒風が和らぎ、春めいてきました。ヤナギがもうすぐ芽吹き始めます。この頃、麦の青さが目に染みて、一昔前の日本の春をよく思い浮かべます。齢をとったせいか、子供の時に聞いた唱歌のメロディーにこみ上げるものがあります。世界中に溢れるもめ事の話はもう嫌で、世の喧騒から離れ、ひたすら河辺に隠棲しております。戦乱のアフガニスタンから日本の平和を祈ります。

平成25年2月17日 記

シェイワ郡の日曜バザール。マドラサの近くで毎週立つ家畜市は、年々規模が大きくなっている。農業生産力と共に、家畜も急速に数を増したからだ。特に冬は遊牧民が加わり、大きな賑わいを作っている。10年前を思うと、感慨ひとしお
2013年2月17日

洪水路横断サイフォンを下流側から見る。洪水路の幅、約250mをくぐらせて送水される。これがシギ村落下流域の命綱だ
2013年2月17日

水さえあれば人が住みつき、生活の営みが始まる。シギ地域は今、開墾と移住ラッシュで、旧村落群がガンベリ沙漠方面に家屋を移し、潤せるところに農地を作る。耕地優先で、水の来る一等地は必ず田畑とし、住宅はなるべく高い場所に置くのがここの常識だそうだ
2013年2月17日

洪水路から見るケシュマンド山脈。この雪山を美しいと見るか不気味と見るかは、立場による。2月にしては雪が異常に薄く、2000年の冬を思い起こさせる。今年の冬は、2000年以来の少雨だった。また、厳冬期を過ぎた降雪は根雪となって残らず、逆に洪水を引き起こす。人々にとっては不気味な予兆
2013年2月17日

シギ分水路は全長1700m、小ぶりだが洪水通過地点がやたらに多い。写真は800m地点で建築中の小サイフォン。移動してきた家々の間を縫うように流れる
2013年2月17日

同水路500m地点。大きな洪水路に沿って伸び、道路と護岸の役目も担う。洪水は麦の生育時期には来ないので、人々は冬期だけ麦畑に利用する
2013年2月17日

緑のベルト。PMS開墾地はガンベリ沙漠の一角、わずか180ヘクタールといえど広大。水だけでなく、防砂林なしの開拓は不可能。くっきりと、天地の境のように広がる緑の線がPMSの砂防樹林帯。開墾は40ヘクタールで足踏みしているが、ここは急がず、木々の成長を待つ
2013年2月17日

この樹林帯を育てるのがPMSの給水塔だ。平和ケ丘に押し寄せるように林が迫る
2013年2月17日

平和ケ丘給水塔から樹林帯を望む。ガズ(紅柳)の成長は著しく、樹高10メートルに迫るものも少なくない。樹齢は4年を超えないはずだ
2013年2月17日

難工事だった岩盤沿いのマルワリード用水路は、今樹林の緑に覆われている。手前は洪水路に植林したガズ(紅柳)で、樹齢2年。鉄砲水はここで流速を落とし、用水路に注ぐ。洪水が運ぶ土は非常に肥えていて、樹木の生育が良い。堆積した土は住民が持ち去る
2013年2月17日

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