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カシコート用水路工事、佳境に入る
(5月8日に主幹水路通水、排水路を開通
マルワリード・シギ分水路1.5㎞を超える)
食糧増産、「PMS自給態勢」の方針を確認

日本は元気の出ないニュースが多くて閉口しましたが、ここ現場は、はつらつと仕事が進められています。

予期せぬ降雨で工事が遅れたものの、来る5月8日、遂に、カシコート取水門を開放し、主幹水路1.6㎞に水を流します。既存水路との連結部は、洪水路が阻み、サイフォンなしに送水ができませんが、この工事は10月に持ち越されます。今の所、調節池から3.5㎞先まで排水路を通し、夏中観察を続けながら、主幹水路の上段部を造成します。

何しろ、昨年2月から一年四カ月の大奮闘、うまくゆけば最近ない嬉しい話となります。ですが、作業員・職員も、連日の強行軍に加え、酷暑の到来で疲れ切っており、水が来れば、元気を取り戻せると思います。

私たちが戻る少し前、4月24日にジャララバードに隣接するラグマン州を震源として地震がありました。30数名が死亡したそうです。幸い、スタッフハウスは家にヒビが入った程度で、大過ありませんでした。また、PMSのてがけたモスク、学校、灌漑のコンクリート構造物は、無事でした。

治安の方は、何者かによる破壊・攪乱工作が派手に進められていて、人々は外国軍の陰謀だと信じていますが、実態が良く分かりません。政情も複雑怪奇、権力闘争と犯罪者の横行、謀略、スキャンダルの暴露合戦で、訳が分からなくなっています。カブールが最悪で、近寄らないようにしています。地縁・血縁でまとまる農村部は、自治会の秩序が良く保たれ、案外安定しています。誰が何をしているかが筒抜けで、皆動揺しないのです。20年前のソ連軍撤退前後の状態によく似ています。今や、作業地のガンベリ沙漠やカシコートは、アフガニスタンで最も治安のよい場所となっています。

今夏は時局がら、地域と協力して自衛策を強化し、本格的な仕上げ工事は今秋に再開されます。5月7日の水路開通が大きな区切りとなります。

今夏は水田を大々的に拡張し、30ヘクタールで水稲栽培を行い、本格的な自給態勢に入ります。JICAを中心に水稲栽培普及の努力がありましたが、灌漑事業と結びついて良い結果を生むと確信しています。ここでは、独立の基礎はカネではなく、食糧自給にあります。この事の重要性については、いずれまとめて報告します。

平成25年5月2日 記

クナール河増水。カシコートの壊れた橋から望む。
昨年春の工事で、右岸は岩盤をむき出し、左岸は水制を並べ、両岸に深掘れが発生、河が二分して中心に小さな砂州が生じている。今年は架橋部前後で左岸の水制を撤去、橋脚部の河道全体を更に深く広げ、堰上がりは殆どなくなった。
2013年5月1日

左岸カシコート側。橋脚前後の水制を撤去。
河道はほぼ直角に架橋部を通過、90m以下に狭まっていた昨年工事前の川幅は、125m以上に拡がり、かつ深くなっている。
また、5本の橋脚のうち中心部だけにかかっていた流水圧が均一に分散し、倒壊の危険が減少した。だが、いずれ撤去しないと危険。
2013年5月1日

マルワリード=カシコート連続堰の状態。
「中洲の復旧」とは語弊があり、「高水位河道の造成」と呼ぶのが正しい。増水すると弧状に越流が起き、中心河道を成している。山田堰で言えば、堰の傾斜から下る水を受ける「舟通し」に等しい。マルワリード側の水位は著しく安定した。
2013年5月1日

第⑤河道。
第③・第④河道よりもやや高い位置を流れ、流方向の調整で交通路は良く保たれている。
2013年5月1日

カシコート取水門を背面から見る。
現在、取水門床からの水位は1.7m、一週間後に開放すると、滔々と水が流れ込む。籠の背面の植樹が始まっており、水門番小屋が間もなく建てられる。
2013年5月1日

マルワリード堰と取水門の遠望。
10月から工事用の交通路を敷設し、一挙に改修する。最も弱いのが第②河道で、積年の懸案を解決できる。
2013年5月1日

道路を横切った主幹水路と、造成中の調節池。
道路横断暗渠20mはもちろん見えない(点線部)。
2013年5月17日

調節池全景。
長径70m、短径50mの池で、ほぼ確立した様式。排水門床レベルは、送水門より50㎝低くとり、池底の土砂を集めて流す仕組み。5月7日に排水路に水を流して確認、送水門と既存水路との連結を検討する。
2013年5月1日

送水門と排水門。
適切と想定される送水量を得るには、送水門の水位60~70㎝。この時排水門を全開すれば毎秒約40m3を排水可能。不慮の事故で池の水深2mに達すれば約205m3/秒を排水できる。
2013年5月1日

排水門・排水路の連結部の作業。
緊急排水200~300m3/秒を想定、これは中河川の水量に匹敵する。強靭な仕上げを行う。
2013年5月1日

排水路は、もともとクナール河の主流であった場所。
2004年にECの団体が主流閉塞を行っている。おそらく洪水被害を避けるためだったと思われるが、9年間の間に土砂が堆積して浅くなっている。排水路は、この旧主流に沿って3.5㎞を流れ、クナール河に戻る。排水路で下手の一部の村々に灌漑が可能。
2013年5月1日

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