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カシコート、河川工事をほぼ終了
ダラエヌール診療所増築、完成間近
シギ送水路に見通し、開拓団自立への動き

一年を超える河との格闘も、間もなく終わります。最終的に4㎞に及ぶ護岸工事は、連続堰と共に、さすがに長大、これほどの物量投入を予想しませんでした。
見回りに往復で2時間、警護の者が音を上げるほどの長さです。この一年、来る日も来る日も、川の流れが気にかかり、安眠できませんでした。現金なもので、河川工事が終局に差しかかると、逆に激しい眠気に襲われ、現場を離れるとただ呆然、喋るのも面倒になり、水のこと以外に何も興味がわきません。

ふと気づけば、見渡すばかりの樹々の新緑です。水の流れと巡る季節の中で十年一日、確か、マルワリード用水路着工が2003年3月19日でした。
お陰で世の流れから遠く離れてしまい、ますます時代遅れとなりました。おまけに「伝統技術」なるものを四六時中思えば、精神まで古色蒼然となってまいります。でも、これはこれで楽しいものです。世の煩わしさに身を置かざるを得ない皆さんに申し訳ないですが、無心に自然と遊ばせていただいたことを感謝しています。

とはいえ、まだまだ片づけねばならぬことが山とあります。カシコートが一段落しかけると、シギ送水路に焦点が移ってきました。分水路とタカをくくっていたら、到る所に鉄砲水の襲う場所があり、現在第4サイフォンを建設中です。わずか2㎞の間に、5か所のサイフォンをくぐらせるのは、マルワリード用水路のダラエヌール渓谷通過以来です。

この間にもガンベリ沙漠開拓が進められており、農業委員会の結成は先に報告した通りです。この一週間の目立った動きは、以下が決まったことです。

1.揚水水車の設置(マルワリード用水路2㎞地点の上カンレイ村)
2.畜産をガンベリで開始。

何れも面白い話ですが、もう少し具体化してからお伝えいたします。揚水水車は既に設置場所を決め、朝倉市・山田土地改良区の協力を得て、試作段階に入りました。畜産の方も小規模に始めて漸増する方針で、これによって得られる有機肥料も大きな魅力となっています。この背景には、作付けを重ねてきた牧草用アルファルファが有望になってきたこと、樹林帯で洪水・砂嵐を制して牧草地の確保が可能になったこと、ジャララバード事務所の管理体制が確立したことが、大きな力となっています。

なお、ダラエヌール診療所の建築が間もなく終わり、4月初めから使われます。また、開拓団居住地に職員宿泊所ができれば家賃を全て省き、太陽光発電で大幅に石油を節約できます。更に、砂防林の間伐材で、当地で欠かせぬ燃料の薪を完全自給できます。

今年度は、いつもながら、多岐にわたる大きな動きがありましたが、皆さんのお支えによってここまで来れたことを感謝します。来年度もこの自立への動きを更に充実したいと思います。

どうも有り難うございました。

平成25年3月21日 記

ダラエヌール診療所の新棟建設。懸案であった増築は間もなく落成する。これにより、負担になっていた医療職員宿舎(賃貸)を年度内に引きはらう。また、寄贈された太陽光発電で、ジェネレーターの騒音と石油供給から解放された。「必要支出は惜しまず、無駄は徹底して省く」が最近の合言葉
2013年3月17日

カシコート主幹水路は1200mを終え、工事の先端は1400m、調節池に迫っている
2013年3月19日

道路横断暗渠。後は埋立てを待つばかり。交通路が回復すると、石材輸送が楽になる
2013年3月19日

最後の護岸工事が終了すれば、全重機とダンプが殺到して埋立作業と排水路の掘削が始まる。嵐前の静けさ。排水門は床面を0.5m、送水門より低くとり、土砂を排水する様式。斜め堰=堰板方式の取水門=蛇籠工の主幹水路=調節池(沈砂池)と、ほぼ一連のスタイルが定着した
2013年3月19日

カシコート取水門。通水を5月初旬に予定、それまで水門を二重に封印し、時期を待つ。10月の工事開始から5か月、連続堰、護岸、河道拡大と同時に、主幹水路が進められてきた。5か月前の何もなかった河原は、大きく光景を変えた。規模も大きいが、工事の進捗は記録的な速さとなった
2013年3月19日

カシコート取水門から見えるマルワリード堰と取水口。ここが出発点だった。今年はカシコート側の工事のお陰で渇水を免れた。
今年の秋に連続堰が完成すれば、取水幅の間口を広げ、不足がちになってきた取水量を増せる。築造から十年、PMSも経験を積み、やっと安定取水を実現しようとしている
2013年3月19日

カシコート取水門から上流1.5㎞地点(洪水進入地点)の護岸。
河の水位は上がりつつあるが、短絡路の掘削(報告書2011年12月12日写真と同工事)で、堤防前はほとんど水が来ない。現在、植樹を残すのみ。

Green Mound(緑の丘)方式(報告書3月15日、植林帯堤防図)は、洪水を完全に封じこめるのでなく、盛り土と植樹で被災を減ずる堤防。吾々の発明ではないが、クナール河流域では最も適った方式と思える。最終的な天端高は一年の観察を行ってから決定する
2013年3月19日

シギ送水路。洪水路横断サイフォンの上流側。対岸の樹林帯は、シギ住民が自発的に造成したもの。水がある所、緑が広がり、生命の営みが始まる。ガンベリ沙漠は短期間に樹林帯が広がった。洪水路は案外肥沃で、樹木の成長が早い。
(報告書2月4日参照)
2013年3月19日

シギ送水路の第3サイフォン。小さな割に手間がかかるが、恵みは大きい。水路が到る所、周辺をたちまち沃野に変える
2013年3月20日

シギ送水路第4サイフォンの基礎うち。人海戦術で礫石を集め、厚さ50㎝でコンクリート床の基礎を作る。短いものなら人力の方が早い。作業員は機敏で、よく動く。最近ではレベルも正確にとり、水盛りの方が測量器よりも誤差が少ないことがある
2013年3月20日

ガンベリ沙漠のオリーブ園。樹林帯の拡大で砂嵐被害が減り、少しずつ農耕地が広がっている。写真は州の灌漑・農業局とPMSの共同事業で、ガンベリをオリーブの産地にしようというもの。今年3月、とりあえず2000本が植えられた。オリーブは有力な輸出品目としてアフガン政府が力を入れている
2013年3月20日

ガンベリ沙漠開墾地、C区にある記念塔。農業部事務所が置かれた。奇妙なかたちの建物だが、かつて鉄筋とコンパネで作ったにわか作りの小屋を模したもの。沙漠横断の用水路工事の司令塔だった。今でも鉄筋加工、蛇籠・どぶ板・RCCパイプの生産を一手に引き受け、大きな役割を果たしている
2013年3月20日

ガンベリ記念公園。記念塔の話が出た一年前から、暇ひまに遊び心で始めたもの。出来上がると案外立派で、目を和ませる。まさかガンベリ沙漠にこんな公園があるとは、誰も思わない
2013年3月20日

職員のザミール・グル。元教師。この公園の主で花好き。唯一配筋図が読める貴重な存在。6年前、工事中に転落事故に遭い、左足を完全骨折、再起不能と思われたが奇跡的に復帰した。仕事が早く、緊急工事にいつでもチームを率いて活躍
2013年3月20日

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