前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ

速報;カシコート全主要村落に潅水
~洪水対策の護岸工事、間もなく終了~

緊急洪水対策で遅れに遅れていましたが、去る7月6日、主幹水路と既存水路の連結を急ぎ、仮通水を始めました。

既存水路は到る所で傷んでおり、十分量にはまだ程遠い状態ですが、本日7月8日、最後の大村落ゴレークに水が到着しました! 下手は、まる三年間、ほとんど潅水できない状態が続いていたのです。

カシコート取水口からクズカシコート、ハウズバーグ、バンガウ、ゴレークまで11.2㎞、水量確認のため、水路沿い全線を踏査しました。住民の陳述と衛星地図から、計2500ヘクタールは誇張かも知れないと思っていましたが、実見すると、どの村落も皆広大です。下流域だけで二千数百ヘクタールは優にあります。3~10年ぶりに潅水した土地が多く、推定2010年秋の衛星地図では、荒蕪地が赤茶けていたのです。人々の喜びは尋常ではありませんでした。間違いなく、対岸のシェイワ地域に匹敵する耕地が確保できます。

現在、カシコート自治会の取り決めで各村落に2日2晩ずつ、順番に潅水が行われています。とはいえ、既存用水路が狭く、過剰送水で決壊しそうな場所も多く見受けられました。これでは農業生産は余り上がりません。PMSとしては、既存水路との連結部を処置した後、既存水路の拡張(約8㎞)をPMS=ペシャワール会単独事業として、数年をかけ、少しずつ進めてゆくのが妥当だとの判断です。

安定灌漑(=必要な時に、必要水量を送れる潅水)は、農民たちの長い、長い夢でありました。昨年2月から一年半、やっと目的に近づいたことを、喜びと感謝を以てお知らせいたします。

なお、カシコートの治安は自治会が取り仕切っており、警察も軍隊も居ませんが、アフガニスタンの中で最も平和な地域ではないかと思います。

秋から再び大きな河川工事が再開されます。連続堰を盤石にすると共に、「カシコート全域の安定灌漑」を目指し、力を尽くしたいと思います。

明日から断食月です。酷暑の上、雨がほとんどなく、厳しい日々が続きますが、皆元気で働いています。

平成25年7月9日 記

カシコ―ト用水路沈砂池(調節池)全景。やっと送水門を開いて3日目。それらしくなってきた
2013年7月8日

送水門から流れ出す水。当たり前だが、送水してないと送水門ではない
2013年7月8日

既存水路との連結部。連結部は送水門から約150m先のサイフォン(洪水路横断)まで。秋の収穫を待って完成される。俄か作りだが、何カ月も雨がなく農地がますます乾燥、既存水路の流量確認を兼ねて、一時送水に踏み切った
2013年7月8日

既存水路の流量調査。最大流量は2.0m3/秒前後で、これ以上流すと素掘りの用水路に決壊が起きる可能性がある
2013年7月8日

アズバーグ村。耕地を準備して潅水が行われた時の喜びは例えようがないという。三年ぶりのまともな潅水だった。今年は稲作を望めないが、トウモロコシなら間に合う
2013年7月8日

バンガウ村。カエルがどこからともなくやって来て、合唱を始めている
2013年7月8日

これは危ない。難点は外壁の傾斜が急なうえ、既存水路の幅が著しく狭いことだ。だが、水路自体の傾斜はうまくとれているので、拡張工事を少しづつ進めると、飛躍的に農業生産は上がる
2013年7月8日

ベスード護岸始点140mの決壊部の処置は、終局に向かっている。流失した根固め部分・約10数メートルを回復。危うい所だった。洗掘部の深さは3~5m、巨礫の量はダンプカーで560台分に達した。大部分は水面下にある。護岸壁は以前より強靭となり、対岸・カマ第一取水堰の水位も旧に復した
2013年7月8日

同護岸2500m地点、しめきり提第二水制は、とびきり大きい巨礫をダンプ80台分投入、10数メートルを回復、激流を河道中心側へ押しやった。第三水制の先端約30mは昨年から水没して安定、越流型水制になっている。流方向を遠ざけ、河道中心側を深くして岸辺を守っている
2013年7月8日

前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ