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洪水被害甚大、事後処理予断許さず
~カマ取水堰の補修工事始まる
シギ取水口流失、同上流域に深刻な渇水~

今週初めから河の水位が下がり始め、取水堰の様子が見えるようになり、調査を始めて驚きました。「大禍なし」と先に述べましたが、取り消します。やはり「大禍」です。予定を含むPMSの取水堰のうち、

① ベスード第一堰;部分決壊、回復
② カマ第一堰、カマ第二堰;部分決壊、取水量低下
③ シギ堰;今秋建設を予定していた旧取水口が流失
④ マルワリード=カシコート連続堰;部分決壊、取水に支障なし
⑤ シェイワ堰;健在だが紛争多発
⑥ タプー堰;河道変化で一時途絶、回復
⑦ ベスード第二堰;完全に崩壊。手をつける者なし

悲劇的だったのはシギ取水口で、予定していた取水門設置予定部の基礎地面が流失した上、流域100ヘクタール以上が河の藻屑と消えました。これによって、シギ上流域の水が間もなく途切れます。現在、一時的に取水部を変えて潤していますが、かなりの工夫と努力が要ります。

同部はシェイワ堰と主幹水路を共有できるにも拘わらず、渇水を恐れるシェイワ村落が他地域に送水しません。水系と土地所有が一体なので、ことがややこしいのです。PMSのシギ堰建設は、振り出しに戻りました。皮肉なことに、マルワリード用水路末端からのシギ下流域への送水路が完成、上流域と明暗を分けています。

ベスード第一堰は回復、カマ第一・第二堰は修復中です。こちらは楽観的に考えて良いと思います。しかし、大規模な砂州移動が発生していて、連日相当な物量を動員、あと一週間はかかります。また、スランプールの下手・シェトラウは、部分的にシェイワ用水路から潤せますが、シェイワ側と激しく対立、武力衝突寸前に至りました。しかし日本と異なり、渇水の恐怖は自給自足の農民にとって特別です。対立も解らないではないのです。

PMSでは、シェトラウ分水路(2008年・約350m)、シギ分水路(2013年・約2㎞)の送水量を増して対処、紛争を何とか抑えています。しかし、今度はマルワリード用水路の取水量を増さねばなりません。現在、一日50万トンに上げているものの、これ以上増やすと用水路決壊の危険性が出てきます。灌水の順番制を導入して何とか切り抜けていますが、取水堰の重要性をまざまざと見せつけられた始末記と相成りました。それでも作業地はまともな方だと言わざるを得ません。他の地方では、村落ごと流された所もあったそうです。

堰の改修・補修工事は毎年行ってきたことで、年を経る毎に堰は強くなります。でも、こうも一時に多発したのは初めてです。同時進行のカシコートも手を緩めることができず、忙しい季節になりそうです。ご協力、宜しくお願いします。

平成25年10月3日 記

カシコート主幹水路の壁面上段は、1700m中約1200mを完了。酷暑の中を作業が続けられている。
2013年9月28日

既存水路との連結部を造成中。調節池の送水門から約200m。うち約160mが開水路で、二つのサイフォンを潜る。
2013年9月28日

サルバンド村洪水浸入部の「Green Mound」。三年前(2010年)を超える大洪水だったが、見事にかわした。日本で行われた粗朶沈床は現地に向かない。径25㎝以上の大きな礫石を集め、ヤナギを密植するのがコストと技術の上で容易。ドイツで盛んな近自然工法を真似たもの。ただし地形による。

完工したばかりのシギ送水路は、同地域が主幹水路を失った現在、文字通り唯一の生命線だ。PMSでは水路全体で各分水路の送水量見直しを図り、シギへの安定灌漑を優先、全開で送水を始めた。
2013年9月28日

カマ第一取水堰。堰は無傷だが、中の島にかかる付け根部分に洗掘が起こり、水位が低下した。冬に向けて更に下がるので、工事を開始。カマ郡全体への影響が大きく、河道変化が進むと第二堰も機能を失う。目下、最大の力を注ぐ。以下、カマの工事について報告。
2013年9月28日

約二年半安定していた河道は、砂州Ⅰ・Ⅱ間の流れが閉塞、右岸側の流れが激減左岸カマ側に主流が移り、異常な流水圧で両堰の付根部分が洗掘。

カマ堰完工直後(2011年3月)の様子がグーグル地図上で見れる。右岸へ大幅に流量を増し、カマ取水堰にかかる夏季の流水圧を減じ、安定を見ていた。

カマ側からカマ第一取水堰を見る。堰は殆ど崩れていないが、砂州との接合部背面が崩れ、幅約20メートル前後の深い流れを成している。全水量のうちカマ側の流量が80~85%、ベスード側の流量が10~15%(完工時はおよそ夫々50%)。第一堰を無理に延長・修復しても、第二堰は確実に崩れる。
2013年10月3日

カマ第一取水堰を中洲側から見る。堰の付け根の背面がえぐられ、急流を成している。この場合、堰延長ではなく、中州を旧に復することだ。
2013年10月3日

砂州復旧作業は一週間を経過。巨礫輸送ができぬため、籠を組んで代用する。
2013年10月3日

右岸ベスード側の河道拡大と砂州Ⅰ・Ⅱ間の河道回復作業。今夏の大洪水で上流から運ばれた砂利が大量に堆積、同河道を閉塞したのが最大の原因。これにより、ベスード側護岸の決壊、堰の部分崩壊は説明がつく。だが、これは結果論だ。「自然は常に想定外」と考えた方がよい。
2013年10月3日

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