前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ

恵みの雨と春一番
河川工事を終了、主力をガンベリに集結
ガンベリ沙漠で魚の大繁殖

当地は日に日に春めいて、新緑と小麦の青さが眼にしむ季節となりました。一週間ほど前から断続的にかなりの降雨があり、急に河の水かさが増しました。再び洪水の季節が巡ってきました。山々は遅い雪化粧ですが、「これで小麦は何とかなりそうだ」との期待が、みなをホッとさせています。

クナール河は突然1メートル以上水位を増し、河川工事ができなくなる寸前、今年度の「洪水対策と復旧」に区切りをつけました。昨年5月下旬からまる10ヵ月、洪水とその後始末に追われてきました。増水・決壊に脅え、渇水に泣き、一喜一憂の一年でした。しかし、お陰でどこもしっかりした堰になり、護岸も強くなったと思います。専門的にはまだまだ未熟ですが、現地に適した護岸法も練度が高くなったと思います。

やはり河は一筋縄では行きません。二月に完了する予定が、とうとう春分の日までずれこんでしまいました。今週末(木曜日)に全ての重機と作業員を川辺から引き上げ、主力がガンベリ沙漠に集結しました。一部はカシコート主幹水路の残余工事と石材の蓄えに回ります。

久しぶりのことで、これでPMS農場、ガンベリ開拓に全力を投球できます。昨年は洪水対策に皆駆り出され、小麦の収穫に続く水稲栽培が思うようにはかどりませんでしたが、今年は存分に食糧生産に励めると思います。

「ガンベリ開拓」といっても、境界地帯を入れると約1000ヘクタールあり、相当な努力が要ります。主な給排水路の整備が最大の仕事ですが、これとても満足な整備は二割を満たしていないと思います。長い時間に堆積した砂丘をならし、浸透水による湿地を処理しながら、営々と続けられます。他方で、PMS自身の完全自給を目指し、様々な試みが行われます。全体事業は、もちろん灌漑・取水の仕事は続けられますが、農業そのものに関心が移っています。昨年の水稲栽培の試みが小規模ながら良好な結果を出して、大いに意気が上がりました。

都市部では、選挙と欧米軍撤退をめぐって騒然としています。しかし、報ぜられるのは点と線の世界で、面を成す農村の光景はほとんど報道の対象になりません。理解されにくいですが、別の世界があります。政局の破綻は嫌ですが、私たちの最大の関心は、専ら食糧生産です。ここでは時間がゆっくりと流れ、即席に出来るものはありません。従って、報告も単調なくり返しになりがちですが、ご勘弁願います。着実に事業は進められています。

年度末に当たり、無事に一年の事業をこなせたことを感謝します。

平成26年3月21日(春分の日) 記

ベスード連続堤防1000m地点、2013年12月5日の状態。連続提が置かれた高水敷全体(約1700m)が下流側から浸食され、上流側へ遡行していた。これは恐ろしい。増水期には見えなかっただけで、まぐれで助かっていた。夏の大洪水の悪夢は、1700mにわたる連続堤防の全面決壊であった。
2014年3月19日

滑り込みで完成していた高水敷保護の越流型水制。
2014年2月19日

降雨と雪解けが同時に到来、クナール河の水位は一日で約1メートル上昇。越流型水制の下流側は緩やかに流れ、土砂堆積が起きていることを思わせる。ほぼ期待通りの結果に皆笑顔。
2014年3月19日(前頁と同場所)

根固め工を代用する高水敷保護(低水位護岸)の説明

越流型水制で深い河道を岸辺から遠ざける方法は、日本の河川でも見られる。(高水敷とは;増水期に流水に浸かる河の部分。低水位の冬は露出する。)

水制の基本機能は、①岸辺の流速を落とす、②流れの方向を変える、の二つである。巨礫を使って上手く設置すると、クナール河では施工が簡単なうえ、確実な効果を期待できることが多い。水制を上流に向けて置けば、流れは水制に対して直角方向に越え、流方向を岸辺から遠ざける。水制の間隔は河の傾斜(流速)で決定。

ベスード護岸1700m地点。水没した人工砂州。堰き上げて屈曲河道を回復しながら、土砂流入を抑えようとする試み。本質的に堰の土砂吐きと同じ考え方。今回は籠の掩蔽で人工砂州を保護しようというもの。
2014年3月18日

翌日、水位は約75㎝下降、今のところ良さそうだ。最終的にはひと夏を過ぎて待ち、再改修。
2014年3月19日

タプー堰の完全復旧。上記「人工砂州」から約500m、屈曲河道下流にある。人工砂州から取水口まで全体を堰体だと考えれば分かりやすい。
2014年3月19日

ガンベリ沙漠から見るケシュマンド山系。やっと訪れたが、遅い降雪は早めに到来する洪水を意味する。
2014年3月19日

水温るむ。春の沙漠横断水路。定番の柳枝工と蛇籠工は、風物として定着した。
2014年3月19日

前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ