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新年度に向けて
アフガン全土で河川の増水

今年度は、以下が大きな目標となっています。多様な動きとなりますが、「気候変動に適応できる取水技術」を広めることが、今や最大の使命だと信じています。これが東部アフガンの死命を制します。

Ⅰ. カシコート

  • マルワリード=カシコート連続堰;洪水期の観察。必要なら部分改修。
  • カシコート主幹水路(新設)の植樹と分水門の増設
  • カシコート主幹水路(既存)の拡張工事を開始(PMS=ペシャワール会単独事業。情勢の安定が予想される秋頃から)

Ⅱ. ガンベリ開拓

  • 主幹排水路の完成
  • 森林の造成
  • PMS食糧自給態勢の確立;牧畜の開始、果樹の出荷、穀物(小麦・コメ)完全自給

Ⅲ. ベスード第二取水堰(ミラーン)の着工。連続堰が一応の完工(2014年3月)を見て、シェイワ郡右岸(シギ、シェトラウ、スランプール、シェイワ、ガンベリなど)、左岸(バルカシコート、クズカシコート)共に、完全な安定灌漑の見通しが着きかけています。あとは既存水路の拡張や小水利施設、排水路の整備で、シェイワ郡全域でカマ郡に匹敵する広大な地域が「穀倉地帯」となります。

「緑の大地計画」のうち、残るはベスード郡のクナール河沿いです。そのうち、タプー堰はPMSが既に建設・維持しており、タンギトゥクチーは現在州政府の手で進められています。残るがミラーンと呼ばれる取水堰で、クナール河沿いでは最大の流域面積を潤します。また、地形上も難しいものがあります。こちらは相当な物量を要するので、可能なら「JICA共同事業」としてPMSの手で実施したいところです。治安情勢はありますが、流域の窮乏、特に他州から移住してきた農民の状態は見るに忍びず、年度内に動きを始めたいと考えています。

今年度はガンベリ開拓に力が入ります。既に小規模ながら牧畜を初め、徐々に拡大します。果樹園はザクロ5000本が3年目を迎えて出荷を予定、オレンジなどの柑橘類はナンガラハル州全体に供給すべく、更に拡大いたします。「緑の大地計画」の見通しがついたとはいえ、フロンティアは無限大です。

変わらぬ御支援に感謝します。

平成26年5月4日 記

カシコート=マルワリード連続堰を右岸マルワリード側の丘陵から見る。河は増水期に入り、まもなく最高水位に迫る。ほぼ計算通りの流方向と水位を保っている。
2014年4月14日

同堰のカシコート取水口を見る

同堰のマルワリード取水口を見る

洪水に備えて河川工事は続けられている。カシコート取水口から約1000m上流の第3水制の強化

増水し始めたクナール河。連続堰工事中に架橋した第③・第④河道は完全に水面下に没している

カシコート取水口からマルワリード取水口を見る

カシコート主幹水路(水門から50m付近)。ヤナギが成長し始めている。現在、取水量は1.5m3/秒

調節池下流側の排水路の造成。今夏は緊急事態に備え、排水路を整備している

嵐前の静けさ。カマ第一取水堰を右岸ベスード側から見る。河床全体が堰に連続して高くなっている。洪水時は中州上流側が水面下に沈む。洪水時の変化は観察せねばならない

ベスード護岸始点の改修箇所。相当大きな巨礫でも、河床の状態によっては洗掘を防ぎ得ない。「かご出し水制」の効果に期待を寄せる。石出しに比べると透水性があり、相当な急流に耐える。連続堰の改修前の調査では、巨礫が流れて籠だけが残った場所があった。今回は巨礫の先端を籠で覆い、効果を見る

ベスード護岸・しめきり堤前の籠出し水制。なるべく連結して沈めると、効果が強い

ガンベリの排水路工事。主幹排水路の完成は5年来の悲願だ。今年の大きな目標の一つ。

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