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河川水位が異常に変動―今秋~今冬に渇水か
~小麦刈取りを終了し一斉浚渫へ
ベスード第二堰(ミラーン取水口)調査を完了~

今週末までにガンベリ農場の小麦刈取りを終了、来週からマルワリード用水路流域の一斉浚渫が開始されます。

今年は河周りの工事を万全にしたため、勢力を農場に集中できました。お陰で、PMS職員とその家族(約1000名)の自給が達成できると期待しています。

今年の河の状態は、少し異常です。例年なら上昇に向かう河の水位がフラットに推移し、山の雪が薄いのです。このままでは8月にも水位は減少し始めます。2006年頃にも類 似の状態がカブール河沿いで起きました(別図参照)。報道では、世界的に「エルニーニョ現象」の影響で食糧生産が落ちることが報ぜられています。その予兆なのかもしれま せん。こちらでは死活問題なので観察を続けたいと思います。

「ベスード第II堰計画」は、ミラーン用水路流域の調査を終えました。住民は渇水の予兆に脅えており、不安が広がっています。今秋に着手すれば、流域4万人の生活を保障 できます。何とか力を合わせて実現したいと考えています。調査の概要は別紙のとおりです。改めて農業生産の低下を実感しました。

日本は政治議論で沸きあがっているようですが、やはり別世界だと思いました。こちらは文字通り食えるか否かの瀬戸際です。この緊迫感はやはり伝わりません。PMSで は「取水技術の確立」を謳い、ジリ貧に低下する農業生産を何とか復興させようとしています。JICA共同事業の一環で「連続堰」が成り、取水の適正技術の完成度が高くな ってきた現在、向う100年を見据え、本気でこの気候変動に対処すべきです。

なお、日本の記事を見ると、どうしても用水路建設に焦点が当てられがちですが、私たちの本領は、繰り返しますが取水技術です。やはり「斜め堰」が最も大きなもので、 「気候変動=水位の不安定=取水困難・洪水被害=農業生産低下=貧困と飢餓」、「その改善は適切な取水技術の導入で可能なこと」、これが日本の人々に訴えねばならぬ最大 の点だと思います。

「緑の大地計画」がそのモデルとして実現すれば、希望が持てます。何とか力を尽くしたいと思います。都市では政情不安が続いていますが、秋頃までは何らかの見通しが つくと見ています。夏季に準備を整え、秋に大攻勢に出ます。事態をご理解の上、御協力を宜しくお願いします。

平成26年5月17日 記

クナール河、カシコート・マルワリードの両取水口水位。例年の水位変動と今年の傾向。例年なら5月下旬~6月上旬までにピークに達し、夏期の降雨で更に 増えることがある。今年は小規模な降雨で一時増水したが、5月中旬から下降に転じた。このようなことは大洪水のあった2010年、2013年も含め、過去ほとん ど見られていない。なお2013年2月に遅い降雪があったものの、5月初旬に一気に解け出し、根雪が薄く残るのみになっている。水位変動はほぼ気温に比例する が、摂氏35度を超えて現在のような低い水位は余り見られていない。冷夏になれば、初秋に急激な水位低下起こり、米の収穫や小麦の植付に大きな影響が出る。

マルワリード側からカシコート取水口を見る。例年ほどの水位上昇がないが、取水は十分だ。堰は安定している。
2014年5月13日

改修されたカマ第一堰。洪水で崩壊した地点は改修で返って強化され、堰長を増して安定水位を保っている。
2014年5月13日

カマ第一堰、カマ第二堰を上流側から見る。カマ第二堰も、堰長を80mから125mに延長(約50%)、その分安定している。カマ郡は北部では最大、現在ほ とんどの住民が戻って人口が爆発的に増えている。タプー堰は河道分割工事(3月6・13・21日報告書)で安定取水を得ているが、秋の状態を見ないと断定でき ない。ベスード郡全体が平皿状の地形で、クナール河が天井川に見える。しめきり提の護りも、やはり生命線で、危ういところだった。
2014年5月13日

連続堰の現在。マルワリード取水口を見る。今年は両岸の住民に不安はない。
2014年5月13日


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