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麦刈りを終えたガンベリ農場(E区)。35ヘクタールは200名を動員して一週間で終了。来週からマルワリード用水路一斉浚渫に集中する。
2014年5月14日

おなじみQ3貯水池(平地から14m上)からの眺め。造成した林が砂嵐だけでなく、洪水から里を守る。
2014年5月14日

Q2貯水池(Q3同様の天上池)の現在。休みには多くのジャララバード市民の憩いの場。周囲に遊歩道を巡らそうという計画がある。
2014年5月14日

洪水通過地点に造成した森。時おりやってくる洪水(矢印)も、ここで緩やかになり、破壊的な動きはなくなった。
2014年5月14日

洪水は樹間をくぐる間に流速がなくなり、用水路の右岸に設けた低地に溜まってから用水路に注ぐ。紅柳の森の効用で洪水も取り込むのだ。
2014年5月14日

伸びる排水路。ガンベリは広大で果てしなく仕事がある。洪水と砂嵐の危険が去った今、目標が排水路の整備に置かれている。
2014年5月14日


ベスード第二堰(ミラーン)建設の意義

ベスード郡はナンガラハル州都ジャララバードに隣接する農村地帯で、約15万人以上が居住する。北西から下るカブール河本川、北東から下るクナール河に挟まれ、耕地面 積約3500ヘクタールを擁する穀倉地帯の一つである。

しかし、近年の気候変動に伴う洪水と渇水の来襲は、農業生産に多大な打撃を与えてきた。PMS(平和医療団・日本)は「緑の大地計画」の一環として同郡全域の安定灌漑 を目指し、同郡取水口のうち、最大の流域面積を有するベスード第一堰(カシマバード)に、「JICA共同事業」として取水設備を建設した(2012年)。

これによって同郡のカブール河水系に頼る耕地(全郡の60~70%)全域が潤されたが、クナール河流域はほとんど手付かずの状態であった。クナール河がカブール河本川に 比べて急流の巨大河川で、大洪水が頻繁に侵入、堰と護岸の建設に多大の労力を要するからである。

PMSでは、2003年から同クナール河からの取水に力を注ぎ、マルワリード堰、シェイワ堰らを建設、試行錯誤を重ねながら、取水・護岸の適正技術を追求してきた。その 結実として、JICA共同事業のカマ第二堰(2011年完工)やカシコート堰(2014年3月完工)が建設された。

今回はベスード郡のクナール河水系を回復、以て全郡に安定灌漑をもたらすものである。クナール河沿いには大きな取水口が3ヶ所あり、何れも取水困難に悩まされている。

  • タンギトゥクチー;耕地面積・約400~500ヘクタール、人口・約2万
  • ミラーン;約1000~1200ヘクタール、約8万
  • タプー;約500~600ヘクタール、約3万

このうちタンギトゥクチーは現在、主幹水路が州政府の手で建設中、タプーは既にJICA共同事業でベスード護岸工事と共に完工している。PMSは、ミラーン取水口・ 取水堰建設に力を注ぎ、周辺の洪水浸入部の護岸を施し、人口と耕地が増したタプー堰を改修すれば、ベスード郡の水問題がおおよそ解決されると見ている。なお、タンギトゥ クチーについては地元行政の意思を尊重し、求めがあれば技術上の関与だけに止める。

取水技術の確立は農業復興の大前提である。この計画が成れば、これまでの事業と併せ、ジャララバード北部穀倉地帯(ベスード・カマ・シェイワ三郡)の耕地、計16,500 ヘクタールが安定灌漑に浴し、65万農民の生存基盤を提供することになる。今後の農業復興モデルとして、少なからぬ意義をもつと思われる。

「アフガン復興」は未だ道半ばである。しかし、気候変動でもたらされる農地の荒廃こそが、国民の大半を占める農民にとって最大の危機だと見ている。地球規模で進行す る気候変動を直ちに止めることはできない。しかし、これに適応して生存する活路を見出すことは、同時代を生きる私たち全体の緊急課題とも言えよう。

工事内容は以下の通り;

A. ベスード第二堰(ミラーン取水口)
  • 取水堰(河道全面堰き上げの石張り)約200m
  • 護岸;約1.5㎞
  • 取水門1
  • 主幹水路;約600m
  • 調節池(分水門 2、排水門1を含む)
  • 排水路;約800m
B. タプー取水口
  • 取水門の改修
  • 堰改修

工期;2014年10月より2016年9月まで(2年間)

詳細は再調査で確認、最終案を提出する。

以上

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