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ベスード第二堰(ミラーン)10月に着工決定
~カシコート、完工間近
   急速に河川水位が下降、低水位に備える
   ガンベリ農業事務所(記念塔)、排水設備の進行~

昨日ジャララバードに戻り、カシコートの最後の仕上げと低水位への備えに追われています。

二回の夏を経たカシコート=マルワリード連続堰の状態は、十分満足できるものでした。まるで自然の滝が弧を描いているようで、美しいと思いました。公式には今月末に作業を打ち切り、JICA第二次共同事業が終了します。実際には連続堰の補修を毎年冬期に行いますが、以後は短期の小さな工事で年々強化されていくと思います。

ベスード第二堰が「第三次JICA共同事業」として、今冬の最大事業です。9月20日にナンガラハル州知事と署名を行い、正式決定となります。これまでと少し異なる点は、取水設備の重要性をアピールすると共に、PMS方式の拡大を念頭に、行政側の参与を促していることです。

並行して、PMSのこれまでの水利事業の調査が、半年をかけて行われることになっています。農業振興のために灌漑は当然不可欠ですが、急速に進む農地の乾燥化(干ばつ)がこれまで余り問題視されなかったことが背景にあります。これはPMSがこの十数年間、訴え続けてきたことで、農村の荒廃の実態とその対処法が広く知らされるべく、協力したいと考えています。

ガンベリ開拓は着々と進められており、周辺農村だけでなく、「PMSの食糧自給」をもめざしています。今のところ、排水設備の仕上げが大きな目標ですが、排水路の試掘段階で十分な効果を確認しています。年度内に実現すれば、マルワリード用水路流域でコメ生産に大きく寄与すると思います。これまで、湿地の発生を心配して水田増加を控えてきたからです。これ自身が2008年以後の大きな懸案で、用水路建設に劣らぬ事業展開となりましたが、詳細は縷々お伝えします。

なお、今夏アフガン東部は異常少雨に近く、例年より早めに河川水位の低下が始まっています。初秋にはまだまだコメやトウモロコシの潅水が必要なので、各取水堰を再度点検し、必要なら小さな改修工事を行います。

政情を見る限りは絶望的で、政局の混乱と無政府状態が続いています。多くの資本が引き上げ、富裕層が国外に脱出し始めているようです。いつか見た光景ですが、餓える人々には逃げ場所がありません。何とか事業を完遂し、一人でも多く生き残れるよう、力を尽くしたいと思います。

これまでの御協力に心から感謝します。

平成26年9月18日 記

連続堰両取水口の水位変動。今夏は例年より少雨で、6月後半をピークに水位が下降している。8月に入って更に急速な下降を示し、現在4月中旬並みの水位となっ た。両取水口の差は、同レベルの4月より10㎝ほど増している。カシコート側の堆積か、マルワリード側の堰体低下が疑われる。必要なら冬期に小改修を行う。

マルワリード取水口から見る連続堰の現在。ほぼ理想的な各河道の流れで、美しい。破堤はない。両取水口の水位差が10㎝ほど大きくなっている。河道②に入れた砂利が流れ去ったことによる可能性が高い。いずれにしても、もはや両岸の安定灌漑の基礎は成った。文字通り「石の上にも10年」。
2014年9月18日

カシコート取水口を遠望。堰体は良く保たれ、コンクリート構造物に破損はない。
2014年9月18日

河道②,③、④の合流部。冬の交通路のための橋脚はよく残っている。
2014年9月18日

今度はカシコート取水口からマルワリード側を望む。河道④・⑤間の破堤はなく、⑤→④へ越流する「堰中堰」もよく残っている。
2014年9月18日

二回の夏を経過したカシコート取水口。
2014年9月18日

定番となったチャルハ(巻き取り式の堰板つり上げ器)による堰板方式。地域の者なら、今や誰でも操作できるようになっている。
2014年9月18日

取水門直後の主幹水路。ヤナギは植樹後10ヶ月だが、水辺から高い位置の分だけ、成長が遅い。
2014年9月18日

用水路800m地点の様子。柳はさし木後後8ヶ月でほぼ活着している。シーシャムの自然林は、洪水の際に力を発揮するので敢えて残している。
2014年9月18日

水やり風景。左岸は植樹後8ヶ月で活着、右岸は4カ月で、一冬越せば手を離れる。自然林であるシーシャムの木々も急速に成長している。
2014年9月18日

沈砂池全景。ほぼ完成し、送水を行っている。門番は、取水口と調節池に各一名を張りつけ、水量を調節する。
2014年9月18日

完成した第二送水門。PMSの工事によって新たに発生した耕作可能地のために設けたもの。スライド門だが、レベルは第一送水門と同じにしている。スライド式にしたのは、新開地が旧主要河道で砂利が多く、土砂堆積を返って期待するためだ。
2014年9月18日

既存水路への連結部は約200m、二つのサイフォンを潜って送水される。サイフォンIは約8メートル、排水路をくぐる。
2014年9月18日

連結部水路。
2014年9月18日

サイフォンII は、鉄砲水が通過する洪水路を約20メートルくぐる。
2014年9月18日

洪水路のサイフォンをくぐった後、約20mで既存水路に注ぐ。以前は河からの取水だけでなく、鉄砲水や排水路の水をめぐってトラブルが絶えなかった。今、安定した水量を豊富に送れるようになった。しかし、最大送水量が約1.5m²と、既存水路の容量が小さい。以後は数年をかけ、水路の拡張を計画。
2014年9月18日

今回の工事で大いに活躍したのが越流型石出し水制だ。カシコート村民を脅かしていた旧主要河道を埋めつぶした後、流方向を変えるために用いられた。二年間で水制間に土砂が堆積して河岸が安定、堤防の根固め工の代用としても、十分な威力を発揮することが分かった。主幹水路の約1.5㎞地点。
2014年9月18日

今回の工事で得たもう一つの着想は、自然林の効用である。カシコートではシーシャムの自然群落が到る所に見られ、激しい洪水にも耐えた形跡がある。もちろん植林だけで洪水は防げないが、洪水の勢いを減殺して被害を減らし得る。今後柳枝工や紅柳と組み合わせて研究を重ねる。
2014年9月18日

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