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ベスード第二堰(ミラーン)の周辺河川の状態

2014年10月11日現在、把握し得る状態は以下の通り。

■ 全体傾向

1.ミラーン取水口予定地より7㎞上流(左岸ゴレーク村)から、クナール河全体が右岸   に寄りつき、右岸にあるシェイワ、シギ、ベスード側が侵食される傾向にある。

2.対照的に、2008年まで観察されていた左岸クズカシコート側に沿う流れは、途絶し   た場所が多く、中央の大きく長い砂州が旧河岸と融合する傾向が強い。

3.ベスードII付近から左岸の岩盤に向かって約100度で屈曲していた旧主流が、浅く   なって高水位河道に変化、10月11日現在、流れが途絶。逆に、ミラーン付近の多列  砂州の間を分かれて流れていた小河道群の水量が増し、合流しながら直進する傾  向が強くなっている。

■ ミラーン近傍の状態

1.取水口予定地では、2013年以後、短径約120m、長径約450mの地域が紡錘状に侵  食され、流失地を洗うように、浅く広い新河道(河道①)が発生、河道②と合して水   量を増している。河道は、幅約100~110mで、水深1m前後、傾斜約1/200で荒瀬  を作っている。

2.かつての主流であった河道⑤は、入口部で砂利が幅80m、長さ100m以上にわたっ  て堆積、低水位期に入った現在、直進河道水面より高い入口部の河床が露出して  いる。

3.2014年6月の調査時点で確認された主流、河道④もまた、入口部で砂利堆積が見  られるが、比較的大きな流量を保っている。新河道①が最大の流量と推測され、    ①②③が下流で合してクナール河の主流を成す。

4.右岸ベスード側の河岸線は、護岸始点より600mまでは旧護岸壁の倒壊のみ。堤防  下部の洗掘が主な変化で、河岸線は後退していない。600m~1600mまでが、新河  道①の発生に伴い、末広がりに侵食されて約200m後退している。取水口付近の新  たな流失地(2014)は短径200m、長径300m、紡錘状で河道に置換されている。

5.旧ミラーン取水口部が完全に水面下に没していたが、現在「砂州1」近傍に残骸が   確認される。10月11日現在、右岸村落の侵食の勢いが落ち、河床が部分的に現れ  ている。
   侵食部に接する上流河原(高水敷)は、二層に分かれて侵食の形跡あり、シルト   層はかなり幅広く洗われ、粒径25~50㎝の玉石が表面を覆い、河道①の流れが玉  石層を水深約1m以上で洗掘、侵食が続いている。
   肉眼で見る限り、河道①が最大の流速と河道幅を有する。

6.巨大砂州5は、全ての流れが右岸ベスード側に集中し、左岸クズカシコートと融合、  30%前後が新たな耕作地として利用されている。

7.砂州4は、蛇行河道⑤、直進河道③④に挟まれ、図A-B間は約1200mで4m、     B-C間が400mで5m、A-C間が1400mで9mの落差を成している。

■ 考察

2003年以降の時間的経過を追うと、以下を推測する。

1.クナール河全体が1/150~1/250で、地形上は扇状地や谷底平野を流れる急流  で、砂州移動が常態であり、ミラーンの変化もその一部として考えることができる。

2.砂州移動は、大洪水で加速され、人工的な河川構造物で修飾される。吾々が観察  し得た記録的洪水は2010年・2013年のもので、人工的な介入を挙げると、30㎞上   流でEC公団が左岸寄りの主要河道を閉塞(2003)、PMSがマルワリード堰建設    (2003~2010)、28㎞上流のマルワリードD水制群(2006)、25㎞上流のF・G水制群  (2007)、1㎞上流の道路公団による水制群(2013)などがある。
   左岸寄りの主要河道閉塞が、それまで小さな分流が多かった右岸シェイワ、ベ    スード側の流量を増したのは明らかである。更にその対策として右岸に設置された  水制群が、河床を著しく低下させて主流化を促し、全体の流れが右岸に寄りついて  固定する現象を生んだと思われる。

3.シギ取水口とミラーン取水口の侵食は、上流30㎞区間で起きてきた、一連の変化の  部分現象として理解される。現在ミラーン周辺で起きつつある主な変化は、
   1)砂州4・5の「陸地化」
   2)蛇行して左岸に向かう旧主要河道⑤の消滅
   3)河道①②③の主流化とショートカット形成
   4)河道①の拡大でミラーン用水路流域の広範な侵食

  4)については、シギ堰と異なり、村落が密集する領域であるから、由々しき事態が   想定される。同地域は比較的低地なので、いったん洪水流入と侵食が繰り返される  と、容易に荒廃に至ると考えられる。(1960年代に旧ソ連がカマ橋を建設した際、ベ  スード側の主流を閉塞した経緯がある。現在のミラーン耕作地の大部分は、その旧  河床にシルト層が堆積して出来たものである。)

■ 当面の方針と対策

以上のことから、対策は以下に要約される。

1.大きな河道変化の趨勢を無理に変えることはできない。ショートカット形成を止め    ず、これを主流とし、高水位期の余水を左岸へ引き寄せ、右岸ミラーン側を護るこ    と。

2.ショートカットとなる河道の河床は広く(幅100m以上)浅くとり、河床低下を防ぐ。

3.新河道①を取水堰に転嫁し、砂州1を強化、高水位期に河道②または③へ流水の   逃げ道を作る。この場合、以下のように、上流側から各河道への流量配分・調整が  欠かせない。

4.現護岸線の始点から直進する600m(河道④⑤の分岐部対岸)までを強化、以後を  右岸側から遠ざけるよう、水制や不連続提(導流提)を駆使し、河道中心へ全体の   流れを導き、河道④⑤入口部の砂利堆積を掘削除去する。この河道開放は、進行  中の侵食を止めると共に、その後の工事の成否がかかっており、緊急に実施する。

5.同地点で上記の措置をとれば、全体流が再び旧屈曲河道と類似の状態となる。河   道⑤を復活、ある程度の自然な流れを確保、洪水に備える。

以上の措置をしながら11月の低水位期を待って再測量の後、取水口の位置を最終決定する。河道・護岸工事は一年間観察、必要なら改修を行う。

以上

平成26年10月11日 記

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