前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ

ベスード第二堰(ミラーン)、浸食に恐怖、護岸工事に全力
~低水位期の到来、各所で渇水の傾向~

10月半ばから突然気温が下がり始めました。これに比例して、クナール河やカブール河で水位が冬並に近づいています。今年は各地で渇水が予想されますが、稲作には影響なく、コムギの播種期に近づき、どれだけ水量を確保できるかが大きな関心です。

PMSの手に成るベスード第一堰、カマ第一堰、カマ第二堰、マルワリード・カシコート連続堰、シェイワ堰は安泰、タプー堰で渇水状態、ベスード第二堰とシギ堰が建設中で、急きょ対策を立て直しています。

ベスード第二堰(ミラーン)工事現場は、やっと軌道に乗り始めています。村落の侵食はやっと止まり、現在侵食部の河道を埋め立てつつあります。石材輸送がすったもんだの挙句にケシュマンド方面から再開され、少し見通しが出てきました。辛いのは、シギ堰建設が急に決まり、大きな作業現場を二つ抱えていることです。工事の効率は、作業現場の数と輸送距離の二乗に比例して落ちます。河川工事は時期の制約があり、相当な努力を強いられます。

これは不可能と見て、ミラーンに主力を集中、シギ堰は本格的な河周り工事を来年に延期し、今冬は水門らの最低限の取水設備にとどめています。現場は戦場のようですが、これまで報告したのと同様、「ひたすら河に聞く」に尽きます。水は正直なので、黙って答えが返ってきます。小細工は効きません。人間界を全く相手にしていないのです。

諸事情により、例年に比べて半月遅くスタートしましたが、皆の気力だけは盛んです。このままいけば、一ヶ月で用水路の地盤(流失地)を回復し、取水門建設を開始するのが11月下旬、一応の試験開通を2月と見ています。冬の雨期にかかるコンクリート工事だけは避けたかったのですが、今年は仕方ないと思います。

平成26年10月23日 記

作業範囲は約1.2㎞。護岸始点から800mの位置にある物見やぐらから全体を見渡せる。2014年10月23日

これが最終的な護岸工事予定(第一期)です。前回送付したものと若干変わっています。第二期は、12月より下流で行うもので、未定です。

(図の説明)
護岸始点を0mとして、-1.0、-2.0、-2.5、-3.0mの水位の等高線、各河道と砂州の位置を示し、それに応ずる措置と護岸線を併記しています。

図で分かるように、全体の流れが右岸側に寄りつき、幅広く軟弱地盤を侵食しながら拡大しています。

ミラーン対岸(左岸)の砂州群は、粒径30~50㎝の玉石で覆われ、堆積はあっても侵食の形跡がありません。河道⑤は低水位期に途切れます。

要点は、以下の通りです。

1. 河道①を導流提で閉塞し、流失地を回復、河道①を②に合流させる。方針を変え、   河道②に堰、砂州1に取水口を予定。
2. 現河道②の流量を減らすため、河道③と④左岸を掘削拡大し流量を増やす。目安は  河道④で50%、河道③で25%。
  ②・③・④を「低水位の直進河道」として固定、経年的変化を観察する。
3. 護岸始点から砂州1まで堤防を築いて交通路とし、地形に応じて石出し水制や不連  続提を置く。
4. 護岸600mまでは50m間隔で石出し水制(計12基)を置き(根固め工の代用)、
  600m~1000mまでは高水敷に堤防を置き、越流型水制で保護。
  対岸は無人の砂州なので、片側護岸でミラーン村落保護に徹する。
5. 予定では砂州1に取水口を置き、初めの計画通りの仕上げを行う。

第7水制(始点から300m)から下流側を望む。550m(第11水制)を作業中。旧堤防に沿う水深は、600m地点まで約3メートル。
2014年10月23日

水制基部は、長さ20m以上、幅10m以上。一基につきダンプカーにして20~40台の巨礫を捨石工として使用。
2014年10月23日

計1メートル以上の石は、なるべく水中に沈めて基礎にする。水制は見えない水面下3メートルに膨大な基礎がある。
2014年10月23日

第11水制(550m地点)から高水敷に乗り上げる。
2014年10月23日

堤防の天端は、重要な交通路でもある。軟弱層は特に厚く砂利で置換し、降雨による軟化を防ぐ。
2014年10月23日

河道①・②・③の全景。①の閉塞を実行中。閉塞は、護岸始点から1000m地点より、堤防予定線(旧河岸線)に沿って下流へ向けて行う。河道③・④の拡大によって①・②の水量は著しく減少、作業が進んでいる。
2014年10月23日

河道③の作業。入口部の砂利堆積を掘り崩す。水位低下に伴って涸れかけていたが、一週間の作業で復活。
2014年10月23日

河道④の作業。2台の掘削機で掘ること2週間、幅約20m、長さ約120mを掘り崩し、間もなく作業を終える。
2014年10月23日

河道①・②風景の拡大。河道①は、幅約120m、平均水深約1m前後、砂利輸送・埋立を全力で実施中。
2014年10月23日

護岸始点より1200m地点。住民は退避していない。逃げる場所がもうないのか、諦めていたのだ。
2014年10月20日

2013年の大洪水で流失を免れた家屋。畑は表土を洗われ、荒廃している。護岸始点より1100m地点。
2014年10月20日

シギ堰取水門の基礎工事。やっと交通路敷設が終わりかけている。水路の仮架橋を終え、これも11月から堰の工事に入る。住民がさんざん苦労した形跡があり、もはや及ばずと、PMSに嘆願、依頼してきたもの。複数の作業地を抱えるのは辛いが、予定を早めて行うことにした。
2014年10月22日

前の報告へ | 報告トップへ | 次の報告へ