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ミラーン護岸工事難航、緊迫の作業
~PMS組織改編、11月25日より新体制
   シギ堰取水門建設、着実に進行 ~

 汝の目の前には、千年も既に過ぎたる昨日のごとく、
 また夜の間のひとときに同じ。
 汝、これらを大水のごとく流れ去らしめ給う。

数千年前の詩人の実感は、ここでは殆ど変っていません。ここ二年間のカシコート連続堰の建設がピークと見ていたものの、河の猛威は想像をはるかに超えるものでありました。ベスードII(ミラーン)の計画が決定した時、「楽な工事だ」とさえ考える節もあったのです。しかし、わずか三カ月の間に、作業地の半分が濁流に呑まれ、延々2㎞に及ぶ急流の護岸工事を強いられるとは思っても見ませんでした。それも、大した増水がない時期です。

目の前で村落が消えていきました。一週間前から、急きょ計画を練り直し、全力を護岸工事と交通路敷設に投じています。予定した交通路ルートが消え、取水口建設地に近づけないのです。加えて石材採取の場所が遠くなった上、シギ堰建設で勢力を分散され、過去最悪の条件の工事となりました。ここは嘆いても詮ないことで、やるべき手を尽くすしかありません。ありったけの機械力と人員を集中し、白熱した作業が進行しています。

河川工事は、たいていの人には縁遠いものですが、実は現地事業の中で、最も重要かつ不確実なものです。水の流れは刻々と変わり、現場で臨機応変の対応を迫られます。それが人の生死を分けると思えば、深刻にもなります。外科手術と同じですが、数千家族の命運がかかっていると考えれば、相手が余りに大きいです。失敗して生きて帰れるとは思えません。変更点の概要は別報告の通りです。

シギ堰については、昨年の大洪水で取水口から約3㎞が流失し、旧取水口下流、約4~5㎞地点に新設しています。こちらも一人前の構えですが、幸い石材が近く、比較的小グループで建設が進められています。

管理体制で大きな出来事では、「用水路班」の解散と再編成が11月中に完了します。マルワリード用水路の建設は2010年の「開通」で一段落したものの、給排水路の整備、砂防林造成、湿地処理、維持管理体制などが、果てしなく続けられてきました。しかし、ガンベリ沙漠開拓が主要な仕事になった現在、多々実情にそぐわない点もあり、改組に踏み切っています。骨子は、「PMSガンベリ支所」とし、パチャグルを責任者とし、その配下に農業班(アジュマル)、灌漑班(ファヒム)、事務連絡係(アジズ)の各担当を置き、全体に開拓事業、特に農業に力を入れるものとなっています。今や「PMS農場」は、200町歩を擁する大きな農園となり、将来の自立に向けて歩み始めています。詳細は縷々お伝えいたします。

平成26年11月13日 記

護岸線の変更;河道①の閉塞は不可能と判断、急きょ取水口予定地まで浸食線に沿って埋め立て、交通路を緊急に確保、これ以上の侵食を防止する。取水口(1400m地点)の建設を11月下旬までに開始しないと、膨大な石材輸送を続けても護岸線2㎞を守れず、3月の増水期に更に大被害をもたらすためだ。

進行中の侵食部の詳細。河道①が護岸始点から1200mの地点で急速に屈曲、河道の落差はわずか400mで1メートル、これは激流である。

1200m地点の村落の侵食。河道①を閉塞しようとすると、埋立部先端から斜めに激流が直撃、侵食がさらに進む。工事による損失が大と判断、11月8日、護岸線を急きょ変更した。先ずはこれ以上の侵食を阻止し、冬季の間に強力な築堤を行い、村落の保護を第一目的とした。
2012年11月9日

埋め立てが進む5日後の同位置。11月9日より石材の輸送力を倍増し、11月13日までに猛烈な努力で1200m地点まで埋め立て、臨時交通路を確保した。来週中に1400m地点(新取水口予定地)まで進出、現用水路に臨時架橋を行い、取水門の基礎うちを開始する。
2014年11月13日

工事開始から5日後の1200m地点。湾曲部の埋立てを完了、砂利は大粒径でも流されるため、河側に25メートル間隔で巨礫を置きながら進む。現在の一日輸送力は、大型ダンプカーで砂利250台分、巨石30台、5日間で約1300台分を投入した。先ずは交通路を確保、築堤の造りはその後に決定。
2014年11月13日

現在の埋立て先端から200m先の取水口予定地を見る。
2014年11月13日

ミラーン護岸始点から上流部の計画(更新)。再調査で侵食が予想以上に激しく、最終的に上流部420mを全面改修中。放置すれば国道が寸断される。

「この危急時で泣き面に蜂」と思われたが、この2週間でU1~U3と0点、4つの水制を完了、こちらは見通しがつきかけている。巨石輸送に皆が奔走した結果である。思わぬ利点は、旧水制の前に長さ300m、幅50mにわたる砂州が大量の砂利を提供してくれたことだ。これがなければ、村落の崩壊は防げなかった。
2014年11月13日

同砂利堆積部の材料。これはもはや砂利ではない。たくあん石ほどのもので、激流が通過したことを意味する。しかし、これによって、ミラーン護岸先端の埋立てが急速に進んだ。
2014年11月12日

水制は、何れも長さ約50m、幅12m前後、上向き水制で「半越流型」。先端は洪水で崩れるが、水制間に土砂堆積を起しやすく、根固め工を助ける。
2014年11月13日

U3から下流を望む。ミラーン護岸は予定1600m、国道保護は420m、計2㎞を超える長大なものとなった。短期間の工事としては記録的。
2014年11月12日

水制先端を越流部でL字型に曲げておけば(G地区参照)、土砂堆積を促しやすい。
2014年11月13日

シギ取水門を現取水口から望む。コンクリート床うちを完了。雪を頂き始めたスピンガル山脈が見える。
2014年11月10日

床うちは一気に行わねばならない。熟練した作業員を動員して、普通半日で完了させる。
2014年11月10日

ガンベリ沙漠から望むスピンガル山脈。雪山の白色、大地の茶褐色、里の緑が、アフガンの基本色。
2014年11月11日

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