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ミラーン、取水堰・取水門・主幹水路に着工
~新シギ堰も進行、冬期工事に見通し
   ガンベリ開拓新体制発足~

一時はどうなることかと思いましたが、ミラーンの冬期工事は、ほぼ勝負がつきました。まだまだ手を緩められませんが、この調子で行けば、3月までには通水試験ができるかと考えています。主要工事が護岸となり、今冬はとりあえずの骨格を作って洪水に備え、来年度から一年がかりで完工を期する予定でおります。

シギ堰は、自然地形を利用して比較的小規模な工事で進められています。しかし、小さくとも一つのまとまった「PMS方式」で、立派なものです。こちらは、将来への訓練を兼ね、ファヒム技師が現場に張りつき、自信を以て進めています。ミラーンよりやや早めに開通予定です。今や実際的な建設方法を皆が会得しており、小生の出番が少なくなってきたのは、大きな進展だと考えています。

なお、河川工事の予定が修正に修正を重ね、二転三転しますが、これは運命的なものです。そのつもりで報告を継時的にご覧ください。

日本の事務局側では農業土木学会の国際賞は、あまり興味を引かなかったかも知れませんが、現地PMSでは大きな意義を持ちました。PAWEES(Paddy and Water Environment Engineering Society=水田・水環境工学会)は、事実上の「東アジアの国際農業土木学会」です。曲がりなりにも、技術上の評価を得た訳ですから、現地にとっては大変心強い保障を得ました。ジャララバード現地の農業局・灌漑局もこぞって大きな喜びに包まれました。12月3日、PMS職員一同が集まり、ガンベリ開拓の新体制発足に併せ、記念集会が持たれました。これによって、「緑の大地計画」立案時に発足した「用水路班」を解散、「灌漑班」となり、「農業班」をこれと同格にして、開拓事業の軸足が農業に移されました。これによって、PMSは一大転回点を迎えたことになります。

また、PMS方式の取水設備については、いよいよJICA共同事業の調査が始まり、他地域で適用できるかの検証も行われることになっています。日本人職員が親しく現場を見れないのが最大の悩みですが、その分をPMS側が補い、正確な結果を得るよう協力したいと思います。

折よく、PMS記録担当が取材に訪れており、この間の工事進行やガンベリ沙漠の様子を記録されています。第三者から見た貴重な記録ですので、事務局でも機会があったら映像を見せてもらえると思います。特に谷津さんが10年以上の継時的変化を収めています。

みなさんも、どうぞお元気で。

平成26年12月5日 記

「緑の大地計画」地域。これが最新版です。⑨の新シギ堰が加わり、境界線を正確にしています。

連続堰・両取水口の水位変化。マルワリード、カシコート両堰の差は、河道の変化を推測するためです。低水位期で10㎝前後でしたが、現在15~25㎝と大きくなっています。夏の高水位を恐れて河道②の巨礫による強化をためらい、わざと流れやすい砂利で代用して、様子を見ていたためです。間もなく改修が始まります。

カマ第一堰の現在。今年は例年になく水位が低く、渇水が予測されたが、安定している。砂州との接合部も良く保たれている。
2014年11月30日

カマ第二堰の現在。堰幅を伸ばした分だけ安定したが、中洲との接合部に小決壊があり、やや水位が低下。小さな改修を予定。ただし、いつものように重機を動員するほどのものでなく、籠で補修ができる。
2014年11月30日

カシコート側から見る連続堰の現在。河道②を除けば、良く河道が保たれ、今冬は殆ど改修を要しない。構造物を通過する中心の河道③、左岸よりの河道④は、極めて安定している
2014年12月1日

ミラーンは予測せぬ変化で河川工事に膨大な手間をかける事態となった。護岸線は国道保護を加えると、2,670mとなり、短期間の工事としては最長記録。

護岸始点から1400m、取水堰設置点から上流側を望む。取水門は12月1日に床面のコンクリート打設を終え、着々と進められている。斜め堰は下段の造成を終えてから本格的に進める予定。依然として堤防造成が焦点で、石材輸送が休みなく続けられている。
2014年12月4日

斜め堰の造成は位置を確認してしばらく休止。堰上がりで水門の作業ができないからだ。
2014年12月4日

人間もここでは働くアリに同じ。
12月1日の取水門床面の打設作業は、総動員の人海戦術で行われた。
だが、カシコート連続堰以来、皆が慣れて驚かなくなっている。約400㎡の床うちは午前中であっという間に完了した。

危機が遠のいた1200m地点。護岸堤防の基礎造成が進んでいる。さらに約2メートル高く堤防の天端が置かれる。輸送量をあと二か月落とさねば、十分に年度内の工事を仕上げることができる。
2014年12月4日

始まった取水路の建設。予定400mのうち、300mを掘削、自然砂利層をむき出して、傾斜を取りながらソイルセメントを敷く。来週から人員を動員して本格的に開始される。
2014年12月4日

護岸始点上流側の国道保護。4基の水制(U1~U4)を設置完了。残余工事は急がずともできる。
2014年12月4日

ガンベリ記念公園での職員集会。この日はダラエヌール診療所からも古参職員たちが駆けつけ、楽しい集まりとなった。ナンガラハル州灌漑局、農業局、財務局の局長たちも列席し、PMSの取水事業を称賛、今後の活動に更に期待する旨、祝辞が述べられた。
2014年12月4日

開拓の象徴となる記念塔は、「PMSガンベリ事務所」となり、農業班や灌漑班のオフィスが置かれている。塔は更に一段を加えて高くされ、広い庭園に囲まれた展望台としても利用される。
2014年12月4日

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