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ミラーン、シギ共に2月中に試験通水
~降雨が断続的に到来、河川水位が安定~

降雨、降雪が断続的に来ています。日中は晴れのことが多く、夕刻から早朝にかけて静かな降雨が地面を湿らせています。マルワリード用水路流域は、お陰で、詰めの工事(連続堰第②河道の完成)を待たずに、落ち着いた耕作ができています。

ミラーン堰、シギ堰共に、急速に建設が進んでいます。2月中の試験通水は確実だと思います。タプー堰は最後の改修を終えました。「最後」というのは、ミラーン堰ができると豊富な水量を同地に送ることができるからです。また、現在の堰を維持するのは手間がかかり過ぎるという判断です。

ミラーン、シギ、共に平坦な道のりではありませんでしたが、先ずは今冬の最大の懸案が片づきつつあります。2週間後に吉報をお届けします。

2010年のマルワリード用水路開通から5年、同年の大洪水から4年半、カマ堰に始まる一連の取水堰建設は、一つのスタイルを確立し、成果を得たと思います。最近の成果と呼び得るものは、やはり現場作業員と職員の技術的な熟練度と士気が増したことです。護岸工事、石材の採取と輸送、水門やサイフォンらのコンクリート構造物、水路造成、ライニング、籠の生産と設置、植樹など、どれ一つとっても、河川工事以外で口を出すことがなくなってきました。

このところ帰国する度に、後継の育成が良く話題に出ますが、灌漑事業も臨床医学に似ています。医学校だけで医者はできません。理論的な学習や研究も必要ですが、やはり職人を育てることが本質的な気がしています。その意味では、灌漑事業そのものが訓練であり、現場が多くの後継を生み出す学校です。「事業継続」が今後を考える上で絶対条件です。誰でもができる仕事にしていき、たとい組織が途絶えても、進行中の干ばつ問題が世に知られ、他所で事業が活発になることです。現地と協力して、公的な訓練所などの、お膳立てをすべきです。

報道ではいつも政治的事件や戦争が人目を引き、この問題は今後も大きく取りざたされることはないでしょう。だからこそ、今ここで声を大にして訴えるべきは、気候変動に伴う干ばつと食糧不足です。

誰でも何時かはこの世を去る日が来ます。しかし人が代わり、世が移っても、水の流れは変わりません。水に頼る人の営みもまた、変わりません。私たちの努力が今後も営々と受け継がれ、拡大していくことを祈ります。騒々しい世相ですが、これが最大の置き土産となるよう、心ある人々と共に、力を尽くしたいと思います。

平成26年1月29日 記

連続堰の水位変動。今年度の夏冬の水位差はマルワリード取水門で約1.5m、カシコート取水門で約1.8m、2013年夏の洪水は瞬間の規模で2010年を上回り、カシコート側で3.0mを記録した。現在の水門高4.0mで当分対処できると推測される。普通、冬の水位は1月で最低となり、増水は3月初旬から始まる。

最低水位のミラーン堰は、取水門床面から約40㎝の水位。これだけでも十分と見る。
2015年1月29日

降雪に見舞われたダラエヌール(ケシュマンド山系)
2015年1月29日

ミラーン取水門背部の主幹水路造成と両サイドの盛土。約60mを造成すれば、主幹水路が完成する。
2015年1月29日

進む取水門両サイドと堤防のかさ上げ。
2015年1月29日

調節池(沈砂池)の床面造成。排水路は最終点で送水門より約80㎝低くとり、急傾斜で土砂を排出する。ライニングは排水門まで行う。
2015年1月29日

同、下流側から見る。
2015年1月29日

かつて侵食にさらされていた1200m地点を川側から見る。連続堤防は25mごとに設置された小水制と組み合わされ、根固めを護る。水制長は、10~15m、幅4m前後で半分が堤防内下部に埋設されて基礎を強固にしている。
2015年1月28日

(比較)2014年10月20日の1200m地点。ウシの糞がはりつけてある壁が1200m地点です。

自然高水敷を利用した根固め。幅4m前後、深さ約1mで水制を「埋設」し、流れを河道中心へ追いやる。カシコートで活躍した方法。
2015年1月28日

護岸始点から1400~2200m区間に設置された水制。浸食防止を主な目的とする。軟弱なシルト層を幅広く砂利で掩蔽し、100m毎に石出し水制を置く。長さ40m前後、幅8~10メートル。
2015年1月28日

1700m地点の分流の維持は今年度で廃止、むしろ土砂堆積を促して、右岸ベスード側の浸食防止を目的とする。2015年1月、V字状の洗掘部の下流端を埋め立て、河道中心を遠ざける方針を採った。
2015年1月27日

同地点の川幅は150m、クナール河にしては著しく狭い。カマ側の護岸線がせり出し、ベスード側の軟弱層を深く侵食していた。石出し水制で保護すると河床が著しく低下、水深8m前後、水制先端が年々崩壊する。今回の措置は洗掘端を河道中心へ遠ざけるものだ。
2015年1月27日

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