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クナール河全域で渇水
~12年間で最低水位を記録、カマ堰ら緊急措置を準備
   連続堰、最終仕上げでマルワリード流域は安定
   ミラーン送水試験、6日後~

クナール河流域全体で、異常な低水位が続いています。各地で取水困難による水不足です。昨年夏の高水位は大きな洪水もなく、無事に過ごせたものの、問題は雨期の現在です。申しわけ程度にパラパラと数日間降り、積雪が貧弱です。その上に暖冬が重なり、日に日に山の雪が薄くなっています。仮に今大きな積雪があっても、このまま推移すれば、春に洪水を起して消えるだけです。

この飢餓の不安は、日本やカブールのような都市化された社会では、おそらく伝わりにくいだろうと思います。しかし凶作の年は、必ずと言っていいほど、政治的混乱も倍加します。先だっての「誘拐事件」の報道でさえ、何だか遠い、画面の中の出来事のような気がしています。小麦の不作は農民にとって致命的です。PMSでは「緊急事態」と見て、各取水堰の再点検・強化工事を開始しました。

ミラーンは来週2月18日(水)に送水試験を予定、こちらは低水位に合わせた造りなので、不安がありません。カシコート、マルワリード流域についても、連続堰の詰めの工事(第②河道の仕上げ)が来週中に終わります。既に両岸とも十分な水位を保っています。目下、カマ堰が問題で、自治会と協力、一週後には態勢を整え、渇水を乗り切りたいと思います。

しかし、これは良いことです。こうした天変地異を経て、皆が力を合わせ、より安定した給水が保障されていきます。完全に予測できる自然事象はありません。「対話」とは、必ずしも人間同士だけではないと、最近考えます。

先日から「PMS取水方式の水平展開」が課題になっていますが、近道はないと思います。予期しない出来事にひとつひとつ対処しながら、地域全体が学んでいくこと、それが自然に広がっていくこと、に尽きるような気がします。初めの頃の動きは、渇水になれば争いや不服、洪水が来ればパニック状態が普通でした。最近の動きを見ると、自治会があわてずに、行政をまじえてPMSと善後策を相談するというスタイルが定着してきています。またPMS側も、天狗の鼻を何度もへし折られて試行錯誤を重ね、技術的な対処法を会得してきたことが、住民の信頼と共に、非常に大きいと思います。

仕事は続きます。ご協力を宜しくお願いします。

平成27年2月12日 記

ミラーン工事現場から見えるケシュマンド山脈。冬に入って降雨はわずか数日。山の白雪が日に日に薄くなっている。
2015年2月10日

連続堰の水位変化。12月下旬になって異常低水位が続き、マルワリード用水路末端のガンベリとシギ送水路が、途絶えがちになった。2月7日から作業隊が連続堰に架橋、第2河道の完成を始め、マルワリード側の水位が上がり、堰両端の差がなくなった。

河道②は深く急峻で、流量も多い。ひと夏の堰上がり状態を観察してから完成する予定だった。河道③④の架橋も、専ら②への資機材輸送のためだ。

対岸から見る連続堰の第2河道。クナール河全水量の30%前後が下る激しい流れ。洪水を警戒し、流れやすい砂利を詰めて観察してきたもの。夏季の増水期を観察し、カシコート側と同一水位で調整できることを確認、仕上げに踏み切った。
2015年2月12日

河道作業風景。輸送されてくる巨礫を敷き詰めていく。
2015年2月12日

上流側から見る。旧マルワリード堰に石張り床を延長、これで完全に連続する。
2015年2月12日

第3河道を架橋点から見る。巨礫と籠で敷きつめた河床は洗掘されず、河道が固定されている。
2015年2月12日

第3河道上流側。増水期には水没していたが、コンクリート構造物に破損は認められなかった。
2015年2月12日

第4河道架橋地点。河道はよく固定されている。
2015年2月12日

第4河道を架橋部から見る。コンクリート構造の破損なく、砂利を良く通過させ、堆積も認められない。
2015年2月12日

第5河道。
2015年2月12日

新シギ堰はクナール河の支流を引き込む。巨礫を埋設して位置を主流より低くとり、土砂吐きを設けて仕上がる。
2015年2月12日

著しい水量低下を示すカマ第一堰。しかし、水面下で見えなかった砂州や河道の変化が明らかになり、更に安定した堰に改修できる。
2015年2月12日

カマ第二堰の現在。取水口での水位は約50㎝、渇水にしては十分だが、破綻部はやはり小改修が必要。
2015年2月12日

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