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クナール河、本格的な増水
~同時爆破事件、ジャララバードを震撼~

ジャララバードに暑い夏が近づいています。先の「共同事業評価」で過去のまとめが行われていますが、気温と河の水位の変動が完全に一致することを改めて知りました。アフガン東部では統計らしきものが殆どなく、今後必要な記録を続けていきたいと考えています。

また、現在まとめている技術報告は、支援して下さっている方々への報告として写真集にできます。これまでのPMS灌漑事業の集大成とし、かつ念願の「作業手引き」として現地語訳まで行うべきだと思います。こうして、広くアフガン農村の困窮を知らせる資料ともなります。動きが大きくなり、農村の困窮の実態が伝わるのは歓迎すべきですが、現地業務は膨れ上がる一方です。財政システムの単純化と並んで、宜しく編集への御協力お願い申し上げます。

ミラーン堰は一段落しており、増水に備えて大量の巨礫を準備しています。緊急のものはないですが、小さな工事はたくさんあり、植樹、水門の仕上げ、道路整備、排水路の造成、水路壁上段部の蛇籠工、交通路整備など、少しずつ進められています。

このところ、治安面で外部から撹乱工作が行われ、去る4月18日の同時多発爆破事件では、即死30数名、その後の死亡を加えると100名以上が命を落とし、市民を震撼させました。

25年前のペシャワールと似ていますが、今回はそれほど大規模ではありません。真相は今一つ分からぬ点があり、力関係が読み難くなっています。各勢力や政府内部の抗争も複雑で、伝えられるほど単純なものではないようです。しかし、普通の人は何とか故郷にしがみついて生きていくしかありません。PMSはつまらない争いに巻き込まれず、仕事を積み重ねていきます。

平成27年4月20日 記

4月に入ってから、急速な増水。例年より二週間ほどペースが早くなっている。今年は、2月下旬に集中豪雨、洪水が発生する異常気象。

ミラーン護岸工事の最終仕上がり。堰は一年観察してから完成予定。地形から分かるように、全体が1.5㎞の長大な「自然・斜め堰」で、水位変動は極めて少ない。
護岸は計2,620m、記録的な水制群となっている。河道⑤は増水期のみ流れる。水制U5のみ未改修。

上記地図のU1~U4石出し水制。半分水没しているが、良く流方向を河道中心へ向かわせ、水制間は静かな水面である。激流は堰先端に河の中心へ押しやられ、ひと夏で膨大な量の土砂が水制間に堆積する。国道は護られた。
2015年4月20日

堤防のかさ上げは、一応十分と見られるが、交通路としても使えるよう、少しずつ進めている。護岸線約400m地点。
2015年4月20日

4月に入って急激な水位上昇が起き、涸れていた第⑤河道が流れ始めている。河道幅を広げた第4河道もかなりの水量に見える。
2015年4月20日

高水敷上の水制。ダンプ道に砂利が敷いてあるが、中は巨礫。
2015年4月20日

護岸線1000m付近。河道②と河道①。河道①~⑤まで約1500m、即ち、越流長1.5㎞の「自然の斜め堰」で、他の場所に比べると水位変動が極めて少ない。
2015年4月20日

おなじみ1200m地点。25メートル毎に水制が埋設されて、堤防の骨格を作っている。溢水が絶対ないとは言えないが、あっても大決壊は考えにくい。この辺で折り合いをつけている方が良い。
2015年4月20日

1400m地点。取水門はほぼ出来上がっている。
2015年4月20日

同取水門を下流側から見る。高さ3.0m、カシコート、カマ第二堰らに比べて低いのは、川幅約1000m、自然の砂州列が1.5㎞も連なって越流線を作り、堰き上がりにくい地形だからだ。
2015年4月20日

チャルハ(アフガンの巻き取り式吊り上げ器)で堰板の上げ下ろしを実演。井戸の掘削でも活躍したが、特別に水門用に改良し、現在の形に落ち着いている。やはり使い慣れたものが操作しやすいのだ。重量は19kgで、簡単に持ち運びできる。
2015年4月20日

第一河道全体を堰き上げた斜め堰の現在。水位変動は驚異的に少ない。水が第①河道に着くまでに、河道⑤,④,③,②と分割して流れるからで、これで秋まで待ち、今冬に最終仕上げを行う予定。
2015年4月20日

護岸線1700~2200m地点の彎曲部。最も侵食が激しかった場所。半越流型の石出し水制で激流を遠ざける。(次図参照)
2015年4月20日

湾曲部を襲う蛇行河道と浸食の防止(ミラーン護岸例1700~2200m地点)
柔らかい土質に湾曲河道の外縁が来ると、浸食が急速に進む。上向きの半越流型石出し水制が最も有効で確実。流方向は水制の長軸に対して直角方向へと変化する。水制の間隔は、急流になるほど短くとる。

おとなしくなった排水路。余水を送水路前で捨てる従来方式は、洪水レベルを取り込み、里に浸入したり、排水路にあふれたりで、年々土地を浸食していた。
2015年4月20日

現在の排水路(建設中)、表法の下段を巨礫で覆い、排水量も激減している。子どもの水死事故もなくなる。
2015年4月20日

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