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クナール河、最高水位
~ミラーン、土砂流入対策で新局面
日本大使・カブール政府大臣らガンベリ沙漠訪問~

断食月も明日が最終日です。外気温40℃以上、厳しい断食となりましたが、一同元気で過ごしています。

ミラーンの取水堰を特に注意して観察していますが、水位変動が極めて少ないのに驚いています。他の堰では1.5~2.0mの水位差なのに、ミラーンでは、何と20~25㎝なのです。おそらく、1.5㎞に及ぶ「自然の斜め堰」のせいで、越流線が極端に伸びたためだと思われます。

しかし、素直に喜べません。その分だけ土砂流入も半端でないのです。これで、越流線が長いほど良いという訳でもないことが分かりました。川幅が広いだけ、堰の越流線が長いだけ、緩流化して土砂堆積も起きやすいということです。初秋まで観察を続け、作戦を考えているところです。この場合は、連続堰と同様の着想で、更に堰幅を伸ばして水位を上げ、複数の場所で深く広い「急流の砂吐き」を作ればよいかと思いますが、やって見なければ分りません。かなりの大掛かりな工事を予測し、石材の蓄積を続けています。

ガンベリ開拓では湿地(浸透水)処理が大きな仕事で、現在試験掘削で約700mを掘り進め、200ヘクタール前後の湿地で約2メートルの浸潤線低下、好結果を得ています。

去る7月13日、日本大使、カブール政府の農業大臣と農村開発大臣、国連のFAO(食糧農業機関)所長らの一行が、ガンベリ農場を視察しました。これまで伝えてきたように、今後PMSの灌漑モデルを参考に、食糧生産を増やそうとする動きの一環です。飢餓の問題に関心が高まったことは大いに歓迎すべきですから、PMSとしては、協力の姿勢を示しています。

しかし、問題はやり方と手順です。即席の拡大はできないと考えます。基本的に現在の「緑の大地計画」を完成することが至上命令で、その過程の中で、人材養成や他地域の河道特性、気候・水理学的条件らの調査を十分に進めるのが、筋だと思います。地域性を考慮しない中央集権的なやり方は、画餅で終わります。

確かに現在の農地荒廃の進行を見ると、余り悠長にもしておれません。このことを各方面に強く訴え、広域展開の準備を始めるべきですが、東部の治安情勢も予断を許さず、必要な段階を踏み、急がば回れが良策と考えます。PMSの本丸が崩れると確実に総崩れとなります。この事は会報で述べた通りです。

そのためには現在の「共同事業」を着実に積み重ねると共に、中央(カブール)よりもむしろ地域社会(ナンガラハル州)に密着すべきだと思います。他地域でも同様です。アフガニスタンでは、日本と異なり、これが大切な点だと思います。この事については、また理事会や事務局内での理解を得たいと考えています。

また、これほど規模が拡大してきた現在、渉外や事務処理も膨大になっています。どうぞジャララバード事務所と一体化するつもりで、現在の努力を続けてください。英文のやりとりも今後多くなってきます。簡単に外国人が立ち入れぬ現在、技術的な点や事業の進行については、本週報が唯一の接点です。当方も試行錯誤の連続ですから、多々分かりにくい点があろうかと思いますが、疑問点は遠慮なく尋ね、ご理解いただくようお願いします。

平成27年7月16日 記

念願のガンベリ空撮は、これ一枚です。かろうじてPMS農場のごく一部が見えました。セキュリティのためーか、旋回せずに一直線でカブールに戻ってしまいました。長年マルワリード用水路25km全体の空撮を期待したPMS一同、ガックリ。それでも、ずいぶん変化が分かると思います。現グーグル地図でガンベリ区は10年以上前のものなので、比べてみてください。2015年7月13日

各堰の水位変動。ベスード第一堰(カシマバード)のみカブール河本川、他はクナール河水系。変動傾向はほぼ昨年と同様。カブール河のベスード第一堰だけが非常に不安定で、クナール河と逆に、動揺しながら減少傾向にある。6000m級以上の高山がクナール河水系に集中し、カブール河源流に解け出す雪が減少してきたためだと思われる。ミラーン堰は極めて安定しているが、土砂流入が問題になっている(後述)。

ベスード第一堰要図。

ベスード第一堰(カシマバード)の現在。「真冬の大洪水」による決壊部は完全に復旧し、かえって頑丈さを増している。2015年7月10日

ベスード第一堰取水門。2月の洪水以降、例年より早めの雪解けで高水位が続いていたが、7月中旬から減少傾向にある。水量調節ができなかった以前は、河の水位がそのまま里に流入、流域2000ヘクタールの湿地化が著しかった。安心して住める場所になっている。2015年7月10日

カマ第一堰・カマ第二堰の要図。

カマ第一堰の現在。越流線が中州に及び、中洲が見えなくなっている。
2015年7月10日

同堰を高台から見る。素掘りの旧水路沿いに植えたヤナギ並木が潤いを与える。砂州上流側が水没、堰と一体化しているのが分かる。2015年7月10日

同部の中洲の状態。対岸はベスード護岸を施行した所で、ヤナギとユーカリが成長している。
2015年7月10日

ミラーン護岸線のあらまし。護岸線は更に下流側160mを加え、計2,830m。

ミラーン護岸始点(D0)及び上流側(U1~5)の状態。水制の位置は適格。流方向を河道中心へかわしている。2015年7月16日

D0からU1~5を望む。水制間に砂が堆積して子供が遊んでいる。これなら流失したタンギトゥクチーの旧水路は復活できる。2015年7月16日

D12水制。河道③方向へ大量の流水を送る。D13以降、急速に水位が下がる。
2015年7月16日

堰板を利用した浚渫作業の風景。洪水期の8月まで、とりあえずこれで我慢し、抜本的な対策を秋にとる予定。しかし、3ヶ月間だけなら、これで悪いことでもない。水が冷たいので、率先して皆水に浸かる。二名の水門番が居れば、1時間で済む。本法はPMS職員の発案による。2015年7月16日

沈砂池の土砂堆積。前回浚渫後10日。池底から平均50~60㎝が埋まり、現在、週1回の浚渫作業。土砂堆積処理が、今回の技術上のハイライト。秋の工事に向けて観察中。土砂は9月から激減するが、以前はこれだけの土砂が流路内に入っていたということだ。2015年7月16日

浚渫作業を一番喜ぶのは子供だ。浚渫地に集まって、こぞって魚を捕る。マスとウグイの間のような魚で、急流のクナール河で豊富に産する。普通開きにしてフライで食する。味は良い。2015年7月16日

排水路の根固め保護に使われる柳枝工。巨礫間に密植すると、確かに石壁が崩れ難くなる。挿し木後4カ月。2015年7月12日

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