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ミラーン堰、全力で突貫工事
~11月下旬に試験通水~

現在の進行状況をお知らせします。

全体の試験開通を11月下旬から12月初旬と定め、全力投球が始まりました。理由は、1)河の水位が同時期に最低となって調整がしやすいこと、2)雨期に入ると工事の進行が著しく鈍る上、事故が起きやすいこと、3)柳枝工(粗朶沈床)の最適期が今であること、4)コンクリート構造物の養生期間が3~4週間必要、などによります。

10月20日より作業員多数が集結、最大の山である土砂吐きの床面打ちが始まりました。コンクリート床面積が計1,200平米、体積約500立米ですから、人海戦術で打設作業を行っています。今回は少し進化して、土砂堆積を避けると共に、堰板で水門前の水位を調整することが焦点です。現山田堰の模倣です。

河道②の堰造成も間もなく終わります。本来なら模型を使った水理実験を行うのが筋でしょうが、現地では不可能です。変化の激しい大河は、近代方式で歯が立ちません。経験則を積み重ね、最大公約数で余裕をもって作り、時々の変化に応じて改修を重ねるのが、遅いようでも早道だと結論しています。

今回もう一つ、新たな技術的試みは、独自の粗朶沈床です。実際にはこれまでいろいろと試して、ことごとく失敗しました。急流河川には確かに不向きです。しかし、マルワリード堰の「川中島」は、緑の島として残っていて、砂州を護る植生工としては、ある程度有望だと考えます。上手くゆけば今後使えます。詳細は別に述べます。

平成27年10月21日 記

進行中作業図。河道③A・Bの流量を等分化し、砂州3を固定することが最大の焦点。土砂堆積を軽減するため三ヶ所に土砂吐きを設け、かつ交通路を確保する。連続堰でとられた手法で、今回は水門前の土砂吐きで冬の水位そのものを調整しようとするもの。交通路(砂利)は造成後に除き、河道③Bを開放する。

作業地の上流側を眺める。実測で堰の幅450m、もう引き返す道なし。決して当てずっぽうではないが、たかがアリの知恵だ。暴れ河の水がいかに答えを出すかは最終的に分からない。恐らくこの緊迫感は、今の日本で伝わりにくい。先人の労苦を想い、ただ天に頓首、頓首。成功を祈る。2015年10月16日

第二河道の堰の鳥瞰図(更新)。堰中央にも砂吐きを設けるが、コンクリートを避け、巨礫だけで造る。将来調整が必要な時に、巨礫だけなら自在に作り変えることができる。正確に読めないときは、この方法が簡便で確実。堰の両端は籠を埋設し、さらに植生工を施して砂州の洗掘を防止する。

河道②の堰を上流の砂州3から見る。巨礫の敷幅85m、上下流の長さ約30m、中央に窪みをつけて土砂吐きを設け、弓状の弧を描く。全体が平皿状で、越流する流れを中央に集める。今週中に完了予定。2015年10月20日

同堰を砂州2側から見る。堰が連続する砂州3の下流側は、夏に浅い流れが発生して洗掘を起こしやすい。接合部の籠を更に安定させるため、今回は植生工(ヤナギ粗朶)の効果を試す。2015年10月20日

砂州3の籠の設置。砂州上流側に向けて緩斜面で籠を延長し、更に柳枝工を施す。使われる柳枝は約一万本(2m以上2,000本、1m前後8,000本で、作業員の半分が枝の採取に出払っている。2015年10月20日

始まった土砂吐き(2)のコンクリート床うち作業。手前は構造物を挟む石張り部分の作業。2015年10月20日

作業員の熱気を感ずるのが床うち作業で、活気にあふれる。2015年10月20日

日本のような生コン車など、山中で望むべくもなく、ミキサー車を総動員し、ひたすら猫車で運ぶ。2015年10月20日

同時進行で土砂吐きの両端の石張りが進められる。2015年10月20日

土砂吐き(1)も橋脚と堰板溝の設置が始まり、来週早々床うちを終える。嵐前の静けさ。2015年10月20日

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