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ミラーン堰、河道開放迫る
~マルワリードD沈砂池の改修大詰め
バルカシコート堰一時回復、カマ堰第三次改修へ~

今年の洪水の後始末はまだ続けられています。バルカシコートの方は一時的な堰き上げが完了し、数年後の本格着工を念頭に、巨礫の蓄積が始められました。

マルワリードD沈砂池は、間もなく改修工事を終え、水が流されます。来週より主力の半分がカマ堰の第三次改修に向かいます。

ミラーン堰の工事は山を越えかけていて、間もなく土砂吐きのコンクリート工事が終わります。12月1日または12月5日に河道を開放する可能性が強くなってきました。

ミラーン堰の新機軸は、何といっても砂州移動(=河道変化)に対処する工夫で、大工事になってしまいましたが、技術的に大きな可能性が開けてきたと考えています。これまでの取水堰は、カシコートを除くと、大抵が大きな単砂州と岩盤沿いの取水口との間のものでした。今回のように複列砂州で実現したものはなかったのです。

しかし大きく見ると、堰や護岸で河道を固定すること自体が不自然なものです。そもそも私たちが住んでいる場所自体、河川の氾濫で出来たからです。地球誕生から45億年、現生人類の出現から20万年、その隙間で瞬時を生きていることを考えると、気の遠くなる自然史の流れです。欲張らず、自然とわずかに折合いをつけて生きることだけが許されている――そう思いました。当たり前かもしれませんが、日頃、人の間だけの情報空間で暮らしていると、案外忘れています。今回の大洪水の後始末での実感です。

このところ報道を見ると、報復爆撃やテロで世情騒然、慌ただしいですが、現場からは程遠い話ばかりです。当地での犠牲は話題にならなくなっただけで、少しも以前と変わりません。この地域で当面の餓死や凍死がどれだけ減らせるかが、私たちの専らの関心です。

ガンベリ開拓地の土地問題が、ほどなく大団円を迎えそうです。これについては解決を確認してから、別に詳細をお伝えします。

様々なことが同時に起きていて、事務局側の協力の重要さを痛感しております。現地の事務作業を何としても円滑にすべく、一丸となって、新しい局面を乗り切りたいと考えています。これがPMSの今後の動きに大きな影響を与えます。ご協力を切にお願い申し上げます。

平成27年11月24日 記

マルワリード用水路、D沈砂池の大改修。長い懸案で、やっと抜本的対策が講ぜられた。再測量で池の長径400m、用水路内で最大。2005年に竣工したが、度重なる洪水で土砂が堆積していた。土砂の源は90%以上がジャリババ渓谷通過路(700m地点)からのもので、2013年に通過路を幅36mに倍増、土砂流入は激減した。今回、ミラーン方式を取り入れて抜本的改修が成る。周囲は完全な沙漠だった。もう池とは言えず、堆積土を均して芝生と果樹を植える。2015年11月24日

森林化した池の周囲。植生の種類を増やし、更に拡大される。10年の変化、めまぐるしかったが、機銃掃射も、PRT(米軍・地方復興チーム)も、「養魚地」も、つまらぬ争いも、全てを緑でくるむ。2015年11月24日

水を制するものは地域を制する。働く人々は今やナンガラハル州で最強の地域集団で、敵する者がいない。誰が来ようと、彼らはここで耕してしか生きられない。作業員から事務職までが一体となり、皆が作業の手順を会得している。10年の失敗や成功の経験が彼らを鍛えたのだ。2015年11月24日

排水路は幅1mから2.5m、傾斜も更に急となり、5倍以上の土砂排出力(掃流力)を期待される。故鬼木さんの作った美しいアーチは、そのまま温存される。
2015年11月24日

道路沿いに植えられたユーカリ並木。移植後7年、酷暑の夏に旅人に緑陰を提供する。礼拝を行う憩いの場所になっている。2015年11月24日

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