Top» トピックス» 掲載日:2023.11.10

―アフガニスタンの現状と
PMSの今(13)―

ペシャワール会会長/PMS総院長 村上優

地震支援 その後
 10月7日にアフガニスタン西部のヘラート州で地震が発生してやがて1ヵ月が過ぎます。4回のマグニチュード6.3の地震だけでなく、その後も余震は引き続いており、被災地は不安な日々を過ごしています。テントや食糧などをアフガニスタン政府、国連食糧計画(WFP)、国際赤十字・赤新月社など国際機関が支援していますが、厳しい冬に向かって危機的な状態が続いています。

 国連人道問題調整事務所(UNOCHA)2023年10月27日付報告では、現在までに死者1,480人、負傷者1,950人、160万人が被災し、そのうち11万4千人が緊急に支援を必要としていると推定されています。

PMSの震災支援活動
 ペシャワール会はPMSの要請を受けて10万ドルの震災支援金を送ることを決定した旨、すでにHP(アフガニスタンの現状とPMSの今(12)-2023.10.16掲載 »)でご報告しました。今回はその後の経過をお伝えします。

10月18日、ペシャワール会からPMSに向けて[地震支援目的]と明記して銀行送金をしました。アフガニスタン政府の指示もあり、PMSは銀行から円滑に引き出すことができました。

10月24日、PMSは支援者からの送金を有効に使うべく、ジア医師を筆頭に幹部3名がヘラートに出向き、州政府や支援団体を視察し協議しました。ジャラバードを訪問していた藤田室長をはじめPMS支援室メンバーも合流し、最善と考えられる支援を行うことができました。以下は藤田室長の報告です。

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藤田PMS支援室長の報告(10月31日受信)
10月29日、被災地のインジール、ゼンダジャン両郡の被災地に行ってきました。どちらの郡もなだらかな平地に形作られた丘陵と、広大な岩石砂漠の中にぽつぽつと集落があるといった所でした。ヘラート市内からトルキスタンに通じる道路を40分ほど走るとインジール郡に入り、しばらくすると村が見えてきました。どの家も倒壊し、形の揃わないレンガの山が不規則に数えきれないほどあるという光景です。その村を通過すると左右遠方に同じような風景がぽつぽつと続きますが、地震後に建てられた白いテントが見えると、その近くに、家が全壊したのでしょう、土の塊があることが分かります。見て回った村々で完全に残っている家屋は一つも見当たりませんでした。ひびが入ってもかろうじて残っている建物は、コンクリート建造物の学校や集会所くらいでした。

時間が前後しますが、29日はまずヘラート州知事に面会しPMSの活動目的を伝え、支援方法について助言をいただきました。被災地の支援を取り仕切っている政府機関のシューラ(地域評議会)に活動を告げるようにとのことでしたのでシューラに赴き、代表者に会いました。中央政府の地方復興省担当者の列席のもと、代表者はテントの不足を訴えました。いま被災者が使用しているテントは弱く、冬が近づいている現在、雨風降雪に耐えうるテントが必要なので、支援金はそれに充てさせて欲しいとの希望でした。PMSとしては、まず被災現場を視察してから決めたい旨を伝え、先に記したように被災地へ向かいました。被災地では、現場に置かれた政府機関の支援委員会から被災家族名とこれまでに配給された物資が記録されているリストをもとに、PMSの支援方法を検討しました。結論としてシューラでリクエストのあったテント購入に協力することになりました(ヘラートはこれから来年3月まで台風のように強い北風が吹き、気温も一気に下がり、砂埃もひどいなどの理由)。

30日、州知事の秘書官の立会いのもと、ジア医師から10万ドルが渡されました。支援金取締り担当官も立ち合いで確認し、領収書を受け取りました。

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日本からジャララバード・PMS訪問
 11月5日に訪問メンバーは無事に帰国の途につきました。本来の目的は灌漑・農業・医療事業を見て回り、現場でPMSスタッフと忌憚ない意見交換をして、中村医師の事業継続の喜びを日本・アフガニスタンで分かち合うことでした。視察中の様子は既に月報(2023年8・9月月報-2023.11.1掲載 »)でお伝えしていますが、今後も詳しく報告を掲載していきます。

予期しない地震でしたが、共に行動できたことで絆は一層強くなりました。干ばつや自然災害、経済制裁・国際的孤立の中で苦悩しながらも、共に現場にいること、共に働くこと、そこに私たちの活動の原点があると思いました。できることは限られていますが、活動の灯りが消えることはありません。

ヘラートで余震にさらされながら尽力されたジア医師はじめPMSスタッフの活動を支えてくださっている全ての支援者の皆様に感謝申し上げます。私も皆様と同様に、現場に立ち会いたいと思う一人です。