事務局のみなさん、
週間報告です。
3月最後の報告です。2003年3月19日の着工から7年を過ぎ、以前の工事場所の最終点検を行っています。何だか長~い、長~い夢を見ていたような気がしています。だが、油断は禁物。気が緩んだ時に事故が起きるので、最後の気力をふりしぼり、監督に当たります。
ガンベリ沙漠200ヘクタールの開墾は、成果を焦らずに基礎を確実に固め、年月をかけるべきです。「開墾の基礎」とは、排水路・分水路・農道らの整備や植樹だけでなく、開拓農民の士気を維持し、周辺住民や行政との友好・協力関係を築くことです。これまでの耕作地3,000ヘクタールの回復は、「廃村の復活」と呼ぶ方がふさわしく、回復が早かった理由は、既にあった村の共同体がそっくり戻ってきたからです。
広大な新開地はこれまでのようにうまくいきません。各方面の協力が不可欠になります。
本格的な試験農場(自立定着村)は、今準備が始まったばかりだと考えていいと思います。
そして何よりも、初志に帰り、この事業を通して乾燥化の進むアフガニスタンの危機的な実情と対策を広く訴えることです。アフガニスタンは戦では滅びません。農地の沙漠化で滅びます。成し遂げた灌漑・用水路事業は決して小さなものではありませんが、恩恵を受けたのは広大な国土の一部に過ぎません。ここは、人間の業績を誇らず、この国を癒す一つの解決策として、実を以って、水の恵みの偉大さを訴え続けねばならないと思います。
建設の任を負わされた小生の役割は終わりました。「老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」です。重機の唸り、激流の川の音、威勢のよい作業員たちの掛け声が、耳の奥から消えることはないでしょう。米軍ヘリコプターの機銃掃射の音さえ、懐かしく思い返されます。燃え尽き症候群などという新語は要りません。一仕事終えて、ただ静かに休みたいと思うのが普通の人情でしょう。
最後に述べたいのは、日本と現地、双方が尽くした多大の労苦も、天意に叶ってこそ力となり、成就するということです。人の作ったモノも思想も、やがては滅びます。しかし、天の恵みが廃れることはありません。私心を去り、人為の垣根を超えて協力することにこそ、恵みを顕わす大きなカギがあるような気がします。このことを肝に銘じ、自然と人間の関係を問い直し、引き続きみなさんの御協力をお願いします。それがきっと、自分たちと日本のためでもあるのでしょう。
みなさん、お元気で。







★Dr.T.Nakamura★ 中村 哲
|
なしている。傾斜は7.8mの高低差があり、急流が下る。頑丈な排水路にせねば
ならない。床面はコンクリートに近い強さのものを敷き、瘤落としを100m毎に設け、流速を減殺する。時間はかかるが、これがないと湿害が起きる。3月29日