温暖化と干ばつと戦乱は密接に関連 ―絶望を希望に変えるPMS方式の普及活動 PMS(平和医療団・日本)総院長/ペシャワール会現地代表 中村 哲 |
ペシャワール会報137号より (2018年09月26日) |
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堰の教材は山田堰(福岡県朝倉市)の模型と写真の多い手引書が活躍しています。また、最近改修を終えたカマ第二堰は機能的にも形の上でも山田堰に近く、見学時に説明しやすくなっています。普及は水系が同じ隣接地域から行うのが効率的で、現在近隣のラグマン州、クナール州などに働きかけています。 計画はFAO(国連食糧農業機関)とPMSの共同企画で行われ、少しずつですが現実味を帯び始めています。 秋の工事 秋には現在のマルワリードU(カチャラ堰流域)の継続と共に、カマ第一堰の改修が始まります。カチャラ堰流域は、主幹水路5.5kmと5ヵ所の主要分水路を完成、全域が灌漑可能となっていますが、10km以上の植樹、3.5kmの護岸など大きな工事が残っており、今後約2年をかけて仕上げていきます。カマ第一堰は第二堰と同様な作りですが、これによってカマ郡7,000ヘクタールは安定灌漑を長期に保障できるものとなります。 問題の先送りは許されない
今思い返すと、2000年に始まる大干ばつの顕在化は、世界を席巻する「気候災害」の前ぶれでした。既に海水面上昇による島嶼(とうしょ)の水没、氷河の世界的後退、北極海の氷原融解などが伝えられ、陸上では台風とハリケーンの巨大化、森林火災の頻発、大規模な洪水と干ばつなどが各地で報ぜられていました。 それでも、責任の所在がはっきりしない「気候変化」は真剣に問題にされにくく、CO2削減を敵視する経済至上主義も、依然として根強いものがあります。それは自然を無限大に搾取できる対象と見なし、科学技術信仰の上に成り立つ強固な確信です。実際、近代的生活は、産業革命以来の大量生産=大量消費の流れの上にあり、それを一挙に覆す考えは、多くの人々にとって俄かには受け入れ難いものがあるからです。 だが問題の先送りはおそらく許されないでしょう。放置すれば事態は不可逆の変化になり得ます。温暖化と干ばつと戦乱の関係は、もはや推論ではありません。治安悪化の著しい地帯は、完全に干ばつ地図と一致します。その日の食にも窮した人々が、犯罪に手を染め、兵員ともなります。そうしないと家族が飢えるからです。 ‐ 一連の動向は世界の終末さえ連想する絶望的なものがあります。干ばつの克服は、生易しいものではありませんが、力を尽くして水の恩恵を実証し、希望を灯し続けたいと考えています。 よろしくご協力のほどを切にお願い申し上げます。 |