会計を通じて信頼構築
PMS会計事務担当
中山博喜
ペシャワール会報75号より
(2003年04月16日)
PMS病院勤務のスタッフ
「イクラムさん」だけで4人!
最近、よく夢を見る。
私が生まれてから今まで夢はずっと見てきたわけだが、最近の夢は登場人物が変わってきた。私と一緒に働いている現地の人々が出現しだしたのだ。夢の中でも彼等はヤッパリ現地語である。夢だからといって彼等が日本語を話してくれるような嬉しいサービスはない。しかし意思の疎通は現実の世界以上にスムーズ、かつクリアー、さすが“夢”である。

パキスタンに来てすぐの頃、現地の人々の顔はみんな同じに見えた。名前だって覚えるのに苦労した。現地語には日本語に無い発音が多く、つまりのところ初めて聞く発音ばかりで、しかも同姓同名が非常に多い。病院の中だけで“イクラムさん”が4人いる。こんな理由があるもんで、初めは誰がどの名前で、どの名前の人がどの顔の人というのが全く分からなかった。当然すぐに現地語が話せるわけでもなく、彼等が話し掛けてきた時は「わーっ。な・・・・何か言ってる」と元気に笑顔、内心ドキドキの状態で、顔や名前を覚えていられる状況ではなかったという理由もある。

それも今となっては昔の話(といっても、ほんの2年前の話なんです)で、最近はそれこそ日本人の顔や名前よりもすんなりと、とまでは行かないまでも、夢にまで登場してくるぐらいになったのだ。私の夢の中に現地の人々が登場し始めたという事は、ある意味で言うと、それだけ彼等との関係が深くなり、彼等の存在が私の心に残るものになっているという証拠である。・・・・と思いたい。

作業現場での給与支払。長嶋ワーカ(右から4人目の青い服)
"会計" の見せ場
ペシャワール会の活動には何百人もの現地の人々が携わっている。我々の活動は彼等の活躍と信頼関係なくしては進行しない。病院でもそう、井戸掘りにしても農業にしても、そして食糧配給の際もそうだった。外国人が一切入国することの出来ないアフガニスタン国内、外国の戦闘機による空爆が続くなか、彼等は必死になって走り回り、食糧を配って回った。その活躍ぶりに対して感動し感謝するのと同時に、信頼関係構築の重要性を再認識し、ここまで彼らとの信頼関係を築いてきたペシャワール会の先人達の努力に敬服したものである。

この信頼関係なるしろもの、構築するのも難しければ持続させるのも難しい。この関係を壊してしまう原因の一つとしては金銭的な問題があげられる。金銭的問題のなかでもまた凄い数の問題に枝分かれするのだが、要はこれらの金銭問題にぶつかりながら解決していくのが“会計”の仕事、“会計”の見せ場なのである。と書くと会計の仕事がかなり情熱的でかっこいい仕事に思われるのではなかろうか・・・・しかし現実には情熱的なんてものを通り越し、興奮しすぎて怒りを露にしながら対処しなければならない問題ばかりである。ん〜、やはり現実は厳しい。

「わーっ。な・・・・何か言ってる」なんて言っていた頃が懐かしい (といっても、ほんの2年前の話なんです)、彼らの名前を叫びながら、彼等の顔をまじまじ見ながら、先人達の築いてくれた“信頼”の柱を壊さぬよう、今日も彼等の投げかける問題を解決すべく、・・・・地下にこもって“確認作業”に没頭するのである。

きょう私と同じセクションで働いている現地職員から、「昨夜、私とミスター・ナカヤマが一緒に教会へ行く(彼はキリスト教徒である)夢を見たよ」と言われた。ん〜、彼の夢の中に私が登場し始めたと言う事は、ある意味で言うと、それだけ彼等との関係が深くなり、私の存在が彼の心に残るものになっているという証拠である・・・と。