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ナツメヤシ計画実施へ
~洪水被害からの復旧、大詰め~

冬も終わり頃になって連日しとしと雨が続き、3月になってしまいました。突発的な洪水被害は例年と違って、カブール河流域で猛威を振るいました。クナール河ではカマ第二堰以外は大した被害がなく、水位は平年並みとなっています。

一時はどうなることかと思いましたが、折よくミラーンが冬期工事の詰めの段階を過ぎ、全精力を復旧に注ぐことができています。会計担当の到着と監査を待って、3月20日までには帰国したいと思います。心配されたベスード第一堰は、以前よりも強靭になっています。春の洪水第一波を4月初旬と想定、工事を急いでいます。

ナンガラハル州農業局から話があり、ナツメの生産がガンベリ農場で出来そうです。これには、UAE(アラブ首長国)が興味を示していて、ぜひ実現したいと考えています。既に州政府ではUAEから数千本を贈与されたものの、土質が合わず、ガンベリ沙漠に移植することを強く希望していました。

ナツメは日本でもおなじみですが、ここでは特別な宗教的な意味があります。断食明けの直後、急に空腹を満たさず、先ずナツメを口にすることが、クルアーンで勧められているのだそうです。先の黒糖やオレンジと並んで、ガンベリをナツメの一大出荷地にしようという意気込みです。換金作物としても優れており、何とか実現にこぎつけたいと考えています。計画は州政府と協力する形で、間もなく動き始めます。

なお、三年前からの最大懸案であった「ガンベリ土地貸与」の合法手続きが、間もなく完了します。これは、今後PMSが自立していくための不可欠の要件でしたが、行政手続きで足踏みしていたのです。アフガンでは、政権とは全く独立した「土地管理局」とでもいうべき行政機構があります。最近、ようやくPMSの活動が知られるようになり、大使館やJICAの協力も与って信頼を得、許可が下りようとしています。ジア先生以下が走り回り、「PMSの活動が停止するまで貸与」という線で、落ち着きかけています。長年の悲願でありました。

以上の二つの動きは、将来のPMS独立に向けて画期的だと言えます。やがて、小生らも去る日がやってきます。みな、もう政治の動きには、いい加減飽き飽きしていて、「誰も助けないなら、これからは自分たちで」という健全な雰囲気が、一つの流れとして起きているように思われます。どうぞ、ご声援ください。

平成27年3月8日 記

ベスード第一堰の恐怖。2015年2月24日午後9時頃。主な幹部が門番の訴えを聞いて駆けつけたのが騒動の始まりだった。

ベスード第一堰、翌朝の状態。夜間に溢水し、水門両脇が門番小屋と共に流失。水門は完全に閉じていた。もし水門がなかったら激流が流れ込み、二千数百ヘクタールの地域が冠水する大被害となったはず。「水際での取水量調整」の正しさを実証したものの、これでは恐怖だ。
2015年2月25日

3月7日、約10日の作業で復旧が目前となった水門。両脇と前面を巨礫で埋め、まるで岩盤のように、返って強靭となった。表面は砂利だが、中は全て巨礫が詰められている。

上図を下流側から見る。投入した巨礫は10日間で大型ダンプカー350台分、鉄壁となり、とりあえずの不安は去った。
2015年3月7日

現在難航しているのがカマ第二堰。石材輸送が困難で、籠を代用して落とす。
2015年3月7日

籠は思ったより流されず、この数年間投入したものは、全て留まっている。人海戦術が可能なら、これだけでも行ける。だが、雨の日は動員できない。
2015年3月7日

堰の破綻は約10メートル、中洲との接合部が壊されたもの。原因は越流線の描き方によると考えられる。
2015年3月7日

ダンプカーが石材を積んで渡れない。空の車なら掘削機の支えで渡れる。あとは、三台の掘削機を並べ、リレー式で輸送する苦肉の策。直線の越流線が崩壊の原因で、全体を弓状に修正し、中心に水を集める。応急処置の段階でも心がけることが、やっと職員たちの「常識」として、定着してきている。
2015年3月7日

カマ側から見るベスード郡の中心部と1700m地点。ベスード郡全体がクナール河とカブール河に挟まれた低地だ。今となっては、2010年の大洪水で発生したタプー地域への河道を閉めたのは正解だった。洪水被害の原因だった同地点の砂利堆積は、直進河道を主流化させて、ほぼ安定している。
2015年3月8日

洪水はいろんなものを運んでくる。河原に生えたガズ(紅柳)の苗。しかし水辺では滅多に成長せず、成長しても灌木で止まる。
2015年3月7日

突然の高水位に見舞われた新シギ堰。美しい越流線を描き、巨礫の床面を水が流れていく。職員の技師がこれを会得するまで5年かかったが、もう自分たちで作り、改修を重ねて生きていけるだろう。
2015年2月26日

新シギ堰の竣工式は3月17日に決定、一週間もあれば、護岸工事が終わる。
2015年2月26日

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