現地スタッフとともに受付、カルテの改善
ダラエ・ヌール診療所駐在
鈴木祐治
ペシャワール会報77号より
(2003年10月15日)
ダラエ・ヌール診療所正門
3つの言語が飛び交う
ダラエ・ヌールに来て、もうすぐ3ヵ月が経とうとしています。現地では、診療所での受付という仕事をさせて頂いています。診療時間は午前8時から午後12時半まで、それ以降は急患のみの診療(急患は24時間診療)と時間は短いのですが、1日の外来患者数は120人から160人、多い時には200人を超えるときもあります。

診療費は6アフガニ、または10パキスタンルピー(日本円で約20円)ですが、ハンセン病の患者、癲癇(てんかん)の患者、身体の不自由な患者さんに関しては、無料で診療を行っています。

診療所内のスタッフは、ドクター、ナース、検査技師、薬剤師、受付、各1人ずつ、門番2〜3人で、門番以外は1ヵ月ごとの交代となっています。ダラエ・ヌールでは、パシュトー、パシャイー、ファルシーと3つの言語が飛び交っており、ドクターですら通訳(門番のモハマッド・ヌールさん)が入らないと診療ができないこともあります。
そして、これは日本では考えられないことでしょうが、日毎に男性患者のみの診療日、女性患者のみの診療日と交互に日取りをして診療を行っています。10歳以下の子供や急患に関しては日取りに関係なく診察しています。

ダラエ・ヌール診療所
「この人たちは本当に病人なんだろうか!?」
私が来た当初は、診療所内に「受付所」と呼べる場所はなく、入り口付近に木製のベッドを柵代わりに立て掛けて行なっていました。朝8時開院と同時に60人近くの人達に一瞬にして囲まれ、我先にと言わんばかりに診療券を買い求めに来ていました。

この人達は本当に病人なのかと思う程、皆殺気立っており、お金を投げつけてくる人や、ベッドを押し倒してくる人、中には杖でコツコツ叩いてくるお婆さんまでいるような状態でした。門番が2人いないと落ち着いて配ることもできず、患者さんもスタッフも大量の汗を流しながらのやり取りでした。今では新たな受付所を設けて、以前のような混乱状態は改善されました。

他にも改善の必要のある問題がいくつも見受けられます。まず、癲癇の患者さんについて。私が調べたところ、現在54名の患者さんがいるのですが(2002年1月以降も来院されている患者さんは34名)、患者さん個々のカルテという物がなく、1枚の用紙に複数の患者さんの来院日、症状、処方した薬などが記載されており、それが80枚近く、2つのファイルにバラバラにまとめられていた為、患者さんがいつ来院したのか、どの薬をどれ位処方したのか、どの種類の薬を処方したのかすら明確ではないものが数多く見受けられます。また8月には、700個前後もの期限切れの薬や器具が見つかっており、現地スタッフ皆がこういった状態が良くないと判っていながら、何年も改善しようとせずに診療を行なってきた現状があり、話を聞けば全て他人のせいにされて終ってしまいます。
ですが、これは彼等だけが責められるべきことではないと私は思います。これから、少しずつですが、患者さんの為にはもちろん、スタッフの為にも、彼等自身が継続して管理していける体制を現地スタッフと共に考えていく必要があると思います。

ダラエ・ヌール診療所のPMSスタッフ
マラリアの洗礼
日本では、まずお目にかかる事のできないマラリアですが、こちらでは毎日必ず、マラリアの患者さんが来院しています。6月のマラリア患者数は、53人(患者数)/336人(検査総数)、リーシュマニア症は4人、7月に入り一気に倍増して、349人/596人、リーシュマニア症は3人、8月は更に増え、425人/948人、リーシュマニア症は1人となっております。

この月は運悪く、私もマラリアに感染してしまいました。高熱、極度の悪寒、頭痛、吐気、下痢、身体の痺れなどの症状が一度に現れ、更には、水をいくら飲んでも汗ひとつでなくなり、熱も40度近くまで上がってしまいました。
さすがにこれは少し危ないなと感じ、チェックして頂いたところ、見事に陽性反応が出てしまいました。多少、苦い思いもしましたが、スタッフ皆が看病の為に何度も部屋まで足を運んでくれ、中には夜中に起きて、様子を見に来てくれる人までいて、皆の思いやりに感謝しています。